喉の詰まった感じ(咽喉頭異常感症・梅核気)には鍼灸治療

  • 喉に何かが引っかかっている
  • 奥が腫れている気がする
  • 胸がつかえる

にもかかわらず、耳鼻咽喉科や消化器内科で検査を受けても器質的な異常が見つからない。

 このような症状は、いわゆる咽喉頭異常感症(Globus)として説明されることがあります。東洋医学では古くから「梅核気(ばいかくき)」と呼ばれてきました。
 診断は除外診断が前提で、重大な疾患がないことの確認が重要です。また、咽喉頭異常感症の背景は一つではないことが知られています。胃食道逆流症(GERD)、咽喉頭逆流症(LPRD)、食道運動の乱れ、心理社会的要因などの影響が重なり、機能的な(構造異常がない)違和感として現れると考えられています。
 東洋医学の枠組みでは、梅核気は「肝」「脾」「痰湿」といった概念で説明され、自律神経のバランスや環境要因(睡眠・緊張・体調の波)との関わりが重視されます。

 今回は、日本で一般的に行われてきた保存的治療と、欧米を中心に標準とされるアプローチを文献的に紹介し、さいごに、安全性と多面的な作用が期待できる鍼灸という選択肢を提案します。

三重県津市の鍼灸院「じねん堂はり灸治療院」では、自律神経症状に対する鍼灸については【こちらのページ】で詳しくご案内しています。

目次

日本国内における伝統的治療アプローチとその限界

 咽喉頭異常感症には国内に専用の「診療ガイドライン」がありません。診断・治療に関する中核文献も1970〜80年代の報告が中心で、近年の国内研究は多くはないです。とはいえ、現在の臨床では、喉頭咽頭逆流(LPR)や胃食道逆流(GERD)、機能性愁訴の考え方を取り入れ、まず重い病気を除外したうえで、丁寧な説明と生活上の工夫、PPI(胃酸分泌を抑える薬)を一定期間試す対応、さらに必要に応じて言語聴覚療法(発声・嚥下の指導)や認知行動療法(不安・過敏さへの対処訓練)などの心理・行動面の支援を組み合わせる運用が行われています。つまり、ガイドラインはないものの、関連領域の知見を取り込んだ多面的アプローチ(逆流・筋緊張・ストレスなど個々の要因に合わせた組み立て)で診療が進められているのです。

これまで広く用いられてきた保存的治療とその限界

 日本国内の耳鼻咽喉科の外来では古くから、まず悪性腫瘍(癌)などの重篤な器質的疾患を除外した後、保存的治療が診断的治療として行われてきました。

  • 多種類の薬剤の利用:
     消炎酵素剤(炎症の元となるタンパク質を分解して炎症を抑える薬)や、マイナートランキライザー(不安や緊張を和らげるための薬:抗不安薬)、そして漢方薬(柴朴湯)などが頻用されます。
  • 併用投与の優位性:
     これらの薬剤を単独で投与した場合、有効率は約50%前後でしたが、併用投与することでより良好な結果が得られる傾向が認められました。例えば、消炎酵素剤とマイナートランキライザーの併用により、約70%の症例で臨床的効果が得られたとする報告があります。
  • 漢方薬の役割:
     柴朴湯は、小柴胡湯の抗炎症作用と半夏厚朴湯の抗不安神経症作用を併せ持つと考えられており、特に女性の患者に有効例が多い傾向があったとされています。このアプローチは、咽喉頭の慢性炎症を抑えつつ、心因的要素(不安など)を鎮静させることを同時に目指すものでしたが、約3割の症例は薬剤を投与しても無効であり、医師による説明と指導が重要と報告されています。

欧米・国際的な標準アプローチとその限界

 欧米や国際的なガイドラインでは、胃食道逆流症(GERD)や喉頭咽頭逆流症(LPR)が咽喉頭異常感の主要な原因の一つであるという考えに基づき、次のような治療手順が推奨されています。

  • 経験的PPI治療
     胃酸を抑える薬を一定期間試す方法。症状や経過から胃酸の関与が疑われるときに用います。反応があれば胃酸の関与が大きいと判断し、反応が乏しければ別の原因や次の検査が検討されます。
  • 改善が乏しい場合は専門検査
     経験的PPI治療で改善が乏しい場合、飲み込みの圧や下部食道括約筋(逆流を防ぐ“弁”)の締まり具合を調べたり、症状が出た瞬間に本当に逆流が起きていたかを24時間モニタしたりといった検査を行います。この検査は胃酸による酸性の逆流だけでなく、胃酸以外の“非酸性の逆流”も把握し、症状が出た瞬間に実際に逆流が起きていたか(同時性)を突き合わせて評価します。
     これらの所見をもとに、薬物療法・生活上の対策・行動療法・外科的治療などの治療法を決めていきます。
  • 心理・行動面への介入を組み合わせる
     逆流の治療だけで不十分なとき、言語聴覚療法(発声・嚥下の専門的な指導)や認知行動療法(不安や“感じ方”の悪循環をほどく練習)などを加えます。ストレスや緊張で症状が強まるタイプでは、とくに役立つことがあります。

 こうした段階的な治療は合理的ですが、現実にはPPIに十分に反応するのはおおむね約半数にとどまるという報告が多く、症状に悩まされている期間が長い・不安の自己評価が高いなどの要素が、改善のし難さに関わることも示唆されています。

 一方、韓国や中国など東アジアでは、鍼灸が医療制度や臨床文化に組み込まれている背景から、通常治療(PPIや生活指導など)に鍼灸を上乗せする併用療法の研究が活発です。たとえば、喉頭咽頭逆流(LPR)を対象に、PPI単独よりも「PPI+鍼灸」で逆流症状指数(RSI:逆流症状の自己評価)や喉頭内視鏡所見による客観的評価(RFS)がより改善した、といった報告が蓄積されています。

 本邦の耳鼻咽喉科や消化器内科では、咽喉頭異常感症に対して積極的に鍼灸を勧めるのが一般的とはいえません(少なくとも当院のある三重県津市周辺では一般的ではありません)。一方で、じねん堂は東アジアの併用療法に関する報告を踏まえ標準的な治療を行っても症状が残る場合に、“安全に上乗せできる選択肢”として鍼灸の利用をお勧めしています。

鍼灸治療:多角的要因に作用する“からだ全体”へのアプローチ

 前述の通り、咽喉頭異常感症の治療は、既存の薬剤や心理的介入で限界に直面することが多くあります。ここで、東洋医学に基づく鍼灸治療が、日本国内の患者様にとって新たな希望となり得ます。国際的な研究、特に中国で実施されたランダム化比較試験のシステマティックレビューとメタアナリシスでは、鍼治療の有効性が示されています。

1)LPR(喉頭咽頭逆流)症状とQOLの改善

 LPR患者を対象とした系統的レビュー/メタアナリシスでは、鍼治療を通常治療(PPIなど)に併用すると、逆流症状指数(RSI:逆流症状の自己評価)や喉頭内視鏡所見による客観的評価(RFS)が通常治療単独より有意に改善しました。通常治療だけでは限界があるときの“上乗せ効果”が期待できます。

2)食道運動機能の改善

 鍼治療は、症状を和らげるだけでなく、病態生理に深く関わる消化管運動機能を改善するメカニズムが示されています。難治性GERD症状を持つ中国の患者を対象とした研究では、鍼治療(足三里穴、内関穴、公孫穴)の後に、以下の重要な改善が見られました。

  • 食道収縮機能の改善:
     食道内の食物を適切に排出できない原因となる無効な収縮や断片化された収縮の数が、鍼治療後に有意に減少しました。これは、鍼治療が逆流を起きにくくし、起きても速やかに胃へ押し戻せるようにすることで、食道や喉が受ける胃酸の刺激が減ることを示唆しています。
  • 下部食道括約筋(LES)機能の向上:
     下部食道括約筋(LES)は食道と胃の境目にある筋肉で、胃の内容物が食道へ上がるのを防ぐ“弁”の役割をします。LESがゆるむと胃酸などが逆流しやすくなるのですが、鍼治療により「しっかり閉まっている部分の長さ」と「平均圧(締まり具合)」が有意に上昇しました。つまり、ピッタリ閉まる面積と力が強まり、逆流しにくい状態に近づいたということです。
3)不安・ストレスへの神経調節(喉の“過敏さ”をしずめる)

 咽喉頭異常感症は心理的要因の関与が無視できず、日本のPPI抵抗群の検討でも不安スコアの高さが指摘されています。鍼治療は、この神経的な側面にも作用する可能性があります。
 経皮電気鍼(TEA)を用いたランダム化クロスオーバー試験(中国)では、天突穴と少商穴を刺激することで、咽喉頭の異常感が有意に改善しました。この介入では、鍼が症状の感じ方やストレス関連の訴えを和らげる生体反応に関与する可能性が示唆されています。天突穴は喉頭・気管の前面に近接するため、局所の循環や筋緊張、粘膜の過敏さ、咽喉頭反射などに影響しうると考えられています。

4)安全性

 LPRを対象とする鍼治療のメタアナリシスや原著では、重篤な有害事象は報告されていないとの記載があり、長期服薬の副作用を避けたい方にとって安全性の高い補助選択肢になり得ます。

さいごに

 咽喉頭異常感症は要因が重なりやすく、段階的な治療を行っても、一部では症状が残ることがあります。そのような場合に、鍼灸は安全に上乗せできる補助選択肢として検討する価値があります。病院での治療との併用はもちろん、標準治療後も残る違和感や再発への対処としても、三重県津市のじねん堂は鍼灸を勧めします。

【参考文献】
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宇野 光祐, 齋藤 康一郎, 矢部 はる奈, 甲能 武幸, 小川 郁. 喉頭専門外来を受診した咽喉頭異常感症例の検討―胃食道逆流が関連した症例を中心に―. 日本耳鼻咽喉科学会会報. 2016;119(11):1388-1396.
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本記事は、2015年に作成した「喉の詰まった感じ(梅核気)には鍼灸治療」に、新たな文献を加えて再編集したものです


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