過敏性腸症候群(IBS)には、自律神経や免疫に働きかける鍼灸がお勧めです
過敏性腸症候群(IBS)は、日常生活に大きな影響を与える慢性的な消化器疾患の一つであり、
- 腹痛
- お腹の不快感
- お腹の張り
- 便秘
- 下痢
- ガスの増加
以上のような症状を呈します。特にストレスや食事、生活習慣が発症や症状の増悪に関与していると考えられており、その症状や増悪要因は患者ごとに異なるものの、共通して生活の質を著しく低下させる点が特徴です。
近年、IBSに対する代替療法として、鍼灸が注目を集めています。多数の臨床研究で有用性が示唆されているほか、日本消化器病学会の「機能性消化管疾患診療ガイドライン2020」には、“標準治療法または抗うつ薬にうまく反応しなかった場合は,代替として鍼治療を行うことを提案する。”との記載があり、病院での治療に行き詰った方の選択肢としも鍼灸が勧められています。また、鍼灸は薬物療法と比較して安全性が高く、長期間の治療においても大きな副作用がないことも報告されています。
じねん堂では長年にわたって、過敏性腸症候群(IBS)の鍼灸施術を行っています。IBSにお困りなら、ぜひ、じねん堂の鍼灸をお試しください。
施術例
じねん堂における過敏性腸症候群(IBS)への施術例を紹介します。
【施術者のコメント】
腹部の緊張が非常に高かったことが印象に残っている事例です。
鍼灸と自宅でのお灸によって、主治医も驚くほど(患者談)柔らかいお腹となり、過敏性腸症候群の自覚症状も寛解していきました。お腹の固さは自律神経の交感神経が緊張しがちな方に見受けられる症状です。
なお、うつ症状に対しては、頚部~後頭部への施鍼が奏効したように思えます。
※薬に関して、じねん堂から減薬を促すことはありません。
【施術者のコメント】
下痢型の過敏性腸症候群に悩む10代女性の事例です。
鍼灸と物理療法(スーパーライザー)で施術を行いました。特にお灸に対する反応が良かったので、体表の所見を観察しながらお灸によるアプローチを重点的に行いました。また、自宅でのお灸も実施しました。
週1回の頻度で施術を行い、症状が落ち着いてきた3か月後からはメンテナンス目的の施術に切り替え、月に1ないし2回の頻度で継続しました。34回で終了となりました。
じねん堂で施術を受けたすべての方が改善しているわけではありませんが、ここで紹介した2例に限らず、改善した方は全員が、定期的かつ比較的長期間、辛抱強く受療を続けておられました。
IBSに対する施術は一朝一夕に効果の出るものではなく、施術方法や施術量に注意を払いながら、調子の波もありつつ少しずつ進めていくものであるとじねん堂は考えています。施術の継続を辛く感じることもあるやもしれませんが、じねん堂は力の限りサポートする所存です。
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過敏性腸症候群(IBS)とは
IBSは機能性消化器疾患に分類され、腸自体には明らかな器質的な病変が認められないにもかかわらず、患者は腹痛や排便異常に苦しみます。ローマ基準(Rome Criteria)に基づいて診断され、症状の種類に応じて4つのタイプに分類されます。
- 便秘型(IBS-C): 主に便秘の症状が現れます。
- 下痢型(IBS-D): 主に下痢が特徴的です。
- 混合型(IBS-M): 便秘と下痢の両方が交互に現れるタイプです。
- 分類不能型(IBS-U): どのタイプにも明確に分類できない症例です。
本邦において、IBSは全人口の約10%が罹患していると推定されており、特に女性に多く見られます。軽度から中程度の症状であることが多いものの、重度の症状に悩まされる場合もあります。
IBSの発症にはさまざまな要因が関与しており、腸内細菌叢の乱れと腸管免疫の異常、腸管運動の異常、ストレス、食事、生活習慣、さらには遺伝的要因も考えられています。
IBSが原因で生活の質が低下すると、仕事や日常生活にも支障をきたすことがあり、そのため多くの患者が適切な治療法を求めています。しかしながら、IBSは致命的な疾患ではないため、治療の主な目的は症状の管理であることが多いようです。
一般的な治療法
IBSの治療には、主に食事療法、薬物療法、ライフスタイルの改善、心理療法が含まれます。患者の症状に応じて治療のアプローチは異なりますが、ここでは一般的な治療法をいくつか紹介します。
- 食事療法
IBSの管理において最も基本的な治療法の一つが食事療法です。低FODMAP食が特に効果的とされており、フルクタン、ガラクタン、ラクトース、フルクトース、ポリオールといった特定の炭水化物を制限することで、ガスの発生や腹部膨満感を軽減することができます。さらに、繊維摂取の見直しも重要です。IBS-C(便秘型)の患者には水溶性繊維を増やすことが推奨され、IBS-D(下痢型)の患者には不溶性繊維を減らすことが勧められます。 - 薬物療法
薬物療法は、IBSの症状を軽減するために使用されることが多い治療法です。具体的には、抗けいれん薬、下痢止め薬、便秘薬、抗うつ薬や抗不安薬が処方されます。抗うつ薬は、痛みや不安感を軽減し、腸の動きを調整する効果がありますが、長期使用による副作用も懸念されます。また、IBS-Dの患者にはリファキシミンなどの抗生物質が使用されることがあります。これは腸内細菌叢を調整することで症状を改善することを目的としています。 - ライフスタイルの改善
ストレスがIBSの発症や悪化に寄与することが知られているため、ストレス管理も治療の一環として重要です。定期的な運動や瞑想、ヨガなどのリラクゼーション法は、症状の軽減に役立つとされています。 - 心理療法
IBSの症状は精神的な要因とも深く関連しているため、心理療法も効果的な治療法の一つに挙げられます。特に認知行動療法(CBT)はストレスや不安の管理に効果があり、IBS患者の生活の質を向上させることが示されています。
鍼灸の有効性
近年、過敏性腸症候群(IBS)に対する代替療法として鍼灸が注目を集めています。鍼灸は自律神経や免疫に働きかけて腸管の動きを調整し、症状を緩和する効果があるとされており、複数の研究においてその有効性が示されています。特に薬物療法に満足していない患者や、副作用が懸念される患者にとって有効な選択肢となる可能性があります。
IBSに対する施術に用いられる経穴(ツボ)は東洋医学的な考え方に基づいて決定されますが、その効果やメカニズムは、科学的な視点からも評価されているのです。
症状緩和のメカニズム
鍼灸は主に自律神経系と関係していると考えられています。IBSの患者は腸管運動や腸内感覚が過敏になりやすく、ストレスや精神的な緊張が症状を悪化させることがあります。鍼灸による施術には、ツボに刺激を与えることで自律神経系を調整し、腸管の過敏性を抑え、過剰な腸の動きを正常化する効果が期待されます。また、鍼刺激が内因性オピオイドやセロトニンの分泌を促進し、痛みを軽減する効果があるとされています。そしていくつかの研究は、お灸が免疫系に働きかけて腸内細菌のバランスを調整すること示唆しています。
鍼灸に期待できる効果
複数のRCTおよびメタアナリシスによれば、鍼はIBS-D患者に対して、腹部の不快感や痛み、便通異常を改善する効果があるとなっています。IBSの施術に使用される経穴(ツボ)は腸の動きを調整する役割を持ち、特に腹部や下肢に位置する経穴が効果的とされています。継続的な施術によって腸の過敏な反応が抑制され、症状が緩和されることが期待されます。また、あるネットワークメタアナリシスでは、鍼治療がIBSの他の治療法と比較して、全般的な症状の改善において有効であることが確認されており、特に副作用の少なさが強調されています。
一方でお灸は、腸管の動きを調整し、IBSの症状を緩和すると考えられています。特にIBS-Dに有効であるとされ、便通の正常化が期待されます。灸による施術に関するメタアナリシスでは、腹部膨満感や下痢の症状が改善されたと報告されており、薬物療法に比べても効果が高いことが示されています。東洋医学の観点からだと、お灸には腹部の冷えや血流の滞りを改善する作用があります。
鍼灸の安全性と副作用について
鍼灸は一般的に副作用が少なく安全な施術法であるとされていますが、いくつかの注意点があります。鍼の場合、鍼を刺入する際に痛みや不快感を感じることがあり、特に「得気(とっき)」と呼ばれる特有の感覚が伴うことがあります。得気は施術効果を得るために必要とされる一方で、患者によってはこれを不快に感じる場合もあります。お灸においては、熱刺激による皮膚の火傷などが生じるリスクがあるため、慎重に施術する必要があります。
また、施術後に体のだるさや症状の一時的な悪化が起こることもあります。これは一般的に「好転反応」と表現されがちですが、まぎれもない副作用であり有害事象です。多くの場合、刺激量の過多が原因です。IBSの場合、施術量の調整が難しい事例も少なくなく、(もちろん施術者は細心の注意を払いますが)起こりうる副作用と言えます。
これらのリスクを最小限に抑えるためには、熟練した鍼灸師による適切な施術が求められます。
じねん堂の施術
過敏性腸症候群(IBS)は、その原因や増悪要因のほか、患者自身の刺激に対する感受性も多様であるため、施術法に関しても患者ごとに異なるアプローチが求められます。ここからは、じねん堂の施術手法を紹介します。
鍼灸
じねん堂は多様な病体にマッチした施術を提供するため、刺激の強さが違う幾種類かの鍼灸の手法を用意しています。「どのやり方が一番効くの?」との質問を受けることもありますが、手法自体に優劣はありません。あくまで刺激量と病体との相性だと考えています。
- ふつうの鍼灸
おそらく現在、本邦で最も広く行われている手法です。IBSの場合、足三里、三陰交、天枢、関元など、消化器に関係する下肢やお腹の経穴(ツボ)に鍼やお灸をします。鍼に低周波通電を行うこともあります。比較的細い鍼を用い、体内に刺し入れる深さは筋肉の表面に当たるか少し筋肉の中に入る程度であることが多いです。刺激量は、「ふつう」です。※呼び名は便宜的なものです - 董氏楊氏奇穴
漢の時代から長きに亘って董家に伝わる一子相伝の奥義だった董氏奇穴は、董景晶(1975没)によって73名の弟子に伝授(世に公開)され、その後、弟子のひとりである楊維傑が中心となって体系付けされました。それが董氏楊氏奇穴です。董氏(楊氏)奇穴は成立の古さや医家の秘伝であったことなどから、鍼灸の原典である「黄帝内経(こうていだいけい)」で主に述べられている施術に近い手法だと考えられています。
董氏(楊氏)奇穴の特徴として第一に挙げられるのは、患部に鍼を刺入せず、740余の独自のツボ(奇穴)を利用して患部から離れたポイントを刺激することです。もちろん、必要に応じて常用穴(一般的なツボ)も用います。“ふつうの鍼灸”と違い、通電を行わずに太い鍼で「しっかり」と刺激が与えられます。
董氏楊氏奇穴はいわゆる中国鍼に該当します。IBSに対する臨床研究は中国で行われたものも多く、刺激方法や刺激量の点においてはそれらの研究と共通しています。 - 経絡治療
経絡治療は、黄帝内経を基に編纂された「難経(なんぎょう)」を参考にして、昭和時代に日本で作られた鍼の手法です。本来の鍼治療の行程の中で、最後に不足部分を補うような目的で行われていた“気の調整”を、手法の本体とした施術法です。「繊細な日本人にマッチするよう古典を再構築した」というのが、経絡治療を発案した鍼灸師の主張です。“気”が体表を流れることを理由に、鍼はほとんど体内に刺入されず、皮膚に触れる程度の刺激で施術が行われることもあります。当然、刺激量は「少ない」です。
帳尻合わせのような施術だけで効果があるのかという疑問もあるかもしれませんが、経絡治療で改善したIBSの事例があるのも事実です。ただ、これはあくまでじねん堂の経験であり、信頼するに足る経絡治療の研究(RCTやメタアナリシス)が存在するわけではありません。したがって、じねん堂における施術の選択肢としての優先順位は低く、特に敏感そうなかたや、ほかの手法で刺激過多に陥ってしまったかたにのみ採用しています。
ホームケアとしてのお灸
IBSの改善に、ホームケアは大変重要です。食事や生活習慣に気を付けるのはもちろんですが、じねん堂では特にお灸をお勧めしています。なぜなら、先述したIBSに対するお灸の研究において、7日間毎日お灸をすることで腸内細菌のバランスが調整されるという結果が示されており、お灸が為された経穴(ツボ)も、患者自身で据えることが十分可能な位置にあるものだったからです。このページの冒頭で紹介した事例でも、同様の経穴に自宅でのお灸を実施し、良好な結果を得ています。
物理療法
じねん堂では、鍼灸に追加する手段として物理療法(スーパーライザー)を取り入れています。
スーパーライザーは自律神経機能の改善が期待できる方法として病院等の医療機関でも取り入れられている物理療法機器であり、じねん堂は三重県下の鍼灸院では初めて、当時最新の直線偏光近赤外線治療器だったスーパーライザーPXを導入しました。※2015年 東京医研調べ
IBSの場合、自律神経や免疫への影響を期待して首の部分にある神経のかたまり(星状神経節)に照射します。
通院の目安
過敏性腸症候群(IBS)への施術は、一朝一夕に効果の出るものではありません。もちろん数回の施術で症状が和らぐこともありますが、多くの場合、数か月の期間が必要です。
じねん堂では、5日~1週間に1回の施術を、まずは2か月間継続されることをお勧めしています。
さいごに
鍼灸の過敏性腸症候群(IBS)に対するエビデンスは増加しているものの、その効果は患者個人によって異なるのが現状です。しかし、鍼灸が標準治療に対する補完・代替療法として、特に薬物療法に反応しない患者や、副作用を避けたいと考える患者にとって有力な選択肢となり得ることは、多くの研究が認めるところです。もちろん、単純に併用するのも、IBS改善のための良い手段と考えられます。
じねん堂はIBSへの施術実績が豊富な鍼灸院です。ぜひ鍼灸を試していただき、その効果を実感していただければと思います。
基本施術料 | 会員:4,950円 一般:6,600円 |
初回料 | 2,200円 |
直線偏光近赤外線治療器であるスーパーライザーは、一般的な遠赤外線治療器よりも深部にアプローチすることができます。過敏性腸症候群に対しての場合、頚部の星状神経節近傍に照射します。 | スーパーライザー1回/550円 |
予約
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免責事項
鍼による施術は痛みや出血を伴う場合があります。また、以下のような場合、施術による変化が現れにくかったり、症状の“もどり”が早かったり、施術期間が⻑期に及んだり、施術することをお断りしたりすることがあります。鍼にはネガティブな側⾯があり、万能でもないことをご承知おきください。
構造上の問題による痛み
重篤な疾患による痛み
強⼒なあるいは多種の薬剤服⽤
⾼齢・衰弱による⽣理機能の低下
取り除けない物理的刺激要因
各種⼼理的要因
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※看板がありませんのでご注意ください
【参考】
日本消化器病学会. 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020―過敏性腸症候群(IBS)(改訂第2版). https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/ibs.html. 参照:2024/10/2.
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