【ストレス・胃腸】鍼灸は「神経の反射」を介して免疫に働きかける【不妊・突発性難聴】

 風邪をひいたとき、ケガをしたとき、体は「炎症」という反応を起こして、自分を治そうとします。これが、私たちの体にそなわっている免疫と呼ばれるしくみです。
 この免疫、本来は自分の身体を守るのが役目なのですが、働きが強すぎたり、バランスを崩したりすると、逆に身体を傷つけてしまうことがあります。すると、自己免疫疾患とかアレルギー疾患といったかたちで、様々な症状が現れることになります。
 近年、鍼灸(しんきゅう)の刺激が、免疫のバランスを整える手助けをしてくれることが、いくつもの研究で明らかになってきました。
 今回は、「鍼灸がどうやって免疫に働くのか」について、最新の医学研究を基にお伝えします。

目次

免疫は「神経」を通して調整されている

 これまで、免疫は白血球やサイトカインという物質によってコントロールされていると考えられていました。
しかし最近では、神経のはたらき、とくに「迷走神経」という神経が、免疫のブレーキ役として大切な役割を持っていることがわかってきています。
 たとえば体のどこかで炎症が起こると、その情報が迷走神経を通じて脳に伝わり、脳は「炎症をこれ以上強めないように」と全身に指示を出すといった具合です。
 このしくみは抑制的炎症反射と呼ばれています。

迷走神経とは

「迷走神経」は、自律神経のひとつで、脳から出て、首、胸、お腹の内臓まで広くつながっている神経であり、人体で最も長い神経として知られています。名前の由来は、体の中をさまよう(迷走する)ように走っていることからきています。
 迷走神経には次のような特徴があります。

  • 副交感神経として、心拍や消化、呼吸などのリズムを落ち着かせる役割。
  • 感覚神経として、体の炎症や異常をキャッチして脳に伝える「センサー」のような働き。
  • 内臓と脳を双方向につなぐことで、体の中の情報ネットワークの中心的な通り道としての機能。

 近年の研究では、この迷走神経を通じて脳が免疫や炎症の調整を行っていることが明らかになり、鍼灸や電気刺激によって迷走神経の働きを調整できる可能性が注目されています。

鍼灸が抑制的炎症反射を助ける?

 最近の研究では、鍼灸の刺激によって抑制的炎症反射を作動させることができると報告されています。
 お腹や足のツボ(たとえば足三里)に鍼をすると、皮膚や筋肉にある神経のセンサーがそれを感じとって、脳に信号を送り、次に迷走神経を通して、「炎症を抑えよ」という指令が身体全体に広がる。このような経路が確認されているのです。実際に、鍼灸を受けた動物では、炎症を引き起こす物質(たとえばTNF-αなど)が減少したと報告されています。

脾臓や副腎(ストレス)との関係

 免疫に関係する臓器として、脾臓や副腎も大切です。
 脾臓は、おなかの左上のほうにある臓器です。古くなった血液の細胞をこわしたり、病原体を攻撃する免疫細胞が集まって働いたりする場所で、いわば、免疫の司令室のような存在です。
 副腎は、左右の腎臓の上にちょこんとのっている、小さな帽子のような臓器であり、身体にストレスがかかった際にアドレナリンやコルチゾールなどのホルモンを分泌します。アドレナリンは、血圧や心拍を一時的に高めて、すばやく行動できるように。コルチゾールは、免疫や炎症のはたらきを落ち着かせたり、血糖や体温のバランスを保ったりします。つまり副腎は、ストレスがかかったときに体を守るために働くホルモンの出どころなのです。
 最近の研究では、鍼灸の刺激が迷走神経を介してこれらの臓器とつながり、アセチルコリンやドーパミンなどの調整物質を介して、免疫やストレス反応を整える方向に働くことがわかってきました。
 このように、鍼灸は単に「ツボに刺激を与える」というだけでなく、体が本来持っている神経や免疫のしくみを活かして、内臓や体調のバランスを調整する方法なのです。薬のように外から何かを加えるのではなく、自分自身の力(自然治癒力)を引き出すことを目指している点で、「無理のない方法」と言えるかもしれません。

胃腸の症状に対して

 昔から、「鍼灸は胃腸の調子を整える」と言われてきましたが、近年の研究でも、腸の炎症や腹痛などに関係する物質が、鍼灸によって抑えられることがわかっています。そして、こうした効果は、迷走神経を通じて働いていることも証明されてきています。
 迷走神経は体中にネットワークを張り巡らせているので、「神経を介して免疫や内臓のはたらきを整える」という考え方は、胃や腸だけでなく、他のさまざまな症状にも応用できる可能性があるとも言えます。

不妊や着床の悩みに

 最近の研究では、妊娠の成立や維持には、免疫のはたらき方が大きく関係していることがわかってきました。
とくに注目されているのが、ヘルパーT細胞(Th細胞)という、免疫のバランスを調整する役割を持ったリンパ球のはたらきです。
 このヘルパーT細胞には、次のようなタイプがあります:

  • Th1細胞
    ウイルスや細菌に対する防御反応を助けるタイプで、マクロファージやキラーT細胞などの免疫細胞を活性化させて、感染細胞の排除を促進する働きを持っています。こうした細胞性免疫の反応を主に担います。
  • Th2細胞
    抗体をつくるB細胞を助けたり、好酸球などを活性化することで、体液性免疫を担います。アレルギー反応(たとえば喘息やアトピー性皮膚炎など)にも関与することが知られています。

 この2つはどちらか一方が良い・悪いというものではなく、状況に応じてバランスよく働くことが重要です。
 近年の報告では、妊娠の初期にはTh1よりもTh2がやや優位な状態のほうが、受精卵が着床しやすく、妊娠を維持しやすいと考えられています。逆に、何らかの原因でTh1の働きが過剰になると、受精卵を“異物”とみなして攻撃するような反応が起きてしまい、着床障害や流産につながる可能性が指摘されています。
 こうした免疫バランスの乱れを調整する手段のひとつとして、鍼灸が注目されています。
 鍼灸の刺激は、自律神経系やストレスホルモン、さらにはサイトカイン(免疫の情報伝達物質)などに影響を与えることが確認されており、Th1とTh2の偏りを整える方向に働く可能性が示されています。実際に、鍼刺激によってTh1の過剰な活性が抑えられたという報告もあります。
 こうしたことから、鍼灸は妊娠しやすい体づくりをサポートする補完療法のひとつとして、医療機関や不妊治療と並行して取り入れられることが増えてきています。

突発性難聴との関係

「ある日突然、耳が聞こえなくなった…」
 それが突発性難聴です。原因がはっきりしないことも多いのですが、最近では、内耳の細胞がストレスや炎症でダメージを受けることが関係しているのではないかと言われています。
 こうした内耳のストレス反応には、免疫や神経の働きが深く関係しており、迷走神経を通じた炎症のコントロールが重要だとする研究もあります。鍼灸は、この迷走神経に刺激を与えることで、耳の周辺の血流や神経のはたらきを調整し、内耳の炎症やストレスにブレーキをかける可能性があるのです。

おわりに

 鍼灸は、肩こりや腰痛だけでなく、神経や免疫の調整を通じて、体内のさまざまな機能に影響を与える可能性がある施術法です。
 近年の研究により、鍼灸の刺激が迷走神経などの神経回路を活性化し、炎症やストレス反応を調整する仕組みが少しずつ明らかになってきました。これにより、免疫バランスの乱れが関与する不妊や突発性難聴、消化器の不調などに対しても、鍼灸が補助的な手段として機能しうることが科学的に示されています。
 エビデンスに基づいた理解と、適切な専門家のもとでの施術を通じて、鍼灸がより多くの方の健康に貢献できることが期待されます。三重県津市のじねん堂はり灸治療院は、そのような期待に応え得る鍼灸院です。

【参考文献】
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Andersson U, Tracey KJ. Reflex principles of immunological homeostasis. Annu Rev Immunol. 2012;30:313-35.
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Kuroda K, Nakagawa K, Horikawa T, Moriyama A, Ojiro Y, Takamizawa S, Ochiai A, Matsumura Y, Ikemoto Y, Yamaguchi K, Sugiyama R. Increasing number of implantation failures and pregnancy losses associated with elevated Th1/Th2 cell ratio. Am J Reprod Immunol. 2021 Sep;86(3):e13429.
栗林恒一, 笠原由紀, 田原壮平. 鍼と免疫. 全日本鍼灸学会雑誌. 2005;55(2):114-122.
Merchant SN, Durand ML, Adams JC. Sudden deafness: is it viral? ORL J Otorhinolaryngol Relat Spec. 2008;70(1):52-60; discussion 60-2.


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