「なんとなく調子が悪い」
「検査では異常がないと言われた」
そんな不調の原因として、「自律神経の乱れ」という言葉を耳にされることが多いと思います。
では、そもそも自律神経とは何なのでしょうか。なぜ「乱れる」のでしょうか。
一般に言う「自律神経」は、医学的には「自律神経系」と呼ばれる仕組みを指します。そして最近の研究(Goldstein, 2021)では、この自律神経系を「拡張された自律神経系」として捉え、単なる神経だけでなく、ホルモンや免疫まで含んだ「全身を守る大きなチーム」として理解し直そうとしています。
今回は、このチームがどのように働き、なぜバランスを崩してしまうのかを、なるべく分かりやすく解説します。
自律神経は「神経・ホルモン・免疫」のチーム(拡張された自律神経系)
これまで「自律神経」といえば、「交感神経(アクセル)」と「副交感神経(ブレーキ)」の2つの神経のことだと思われてきました。医学的には、この仕組みはまとめて「自律神経系」と呼ばれますが、この記事では読みやすさのため、基本的には「自律神経」と表現します。
これが、最近の考え方では、自律神経系にホルモンや免疫の働きまで含めた大きなネットワークを「拡張された自律神経系」として捉えるようになってきました。
私たちの体は、おおまかに次のようなメンバーが協力し合うことで守られています。
- 自律神経
瞬時に反応し、心拍や血圧、血管の収縮・拡張などを調整する。 - ホルモン系
アドレナリンやコルチゾール(いわゆるストレスホルモン)などを分泌し、必要なときにエネルギーを「使える形で動員」する。 - 免疫系
体に入ったウイルスや細菌と戦う一方で、炎症を起こしたり、逆に抑えたりしてバランスを取る。
例えば、強い寒さにさらされると、自律神経は血管を縮めて熱が逃げないようにし、同じタイミングで免疫系も「風邪をひかないように」備えを強めます。このように、神経・ホルモン・免疫は、お互いに連絡を取り合いながら「チーム」として働いていると考えた方が、実際の体の反応に近いのです。
「乱れ」の正体は、頑張りすぎによる「摩耗」
私たちの体には、体温や血圧、血糖値などを一定に保とうとする「ホメオスタシス(恒常性)」という仕組みがあります。
一方で、急な危機(ストレス)が訪れたときには、その場を乗り切るために、あえて設定を変えて対応しようとすることがあります。これが「アロスタシス(適応)」です。
例えば、風邪を引いたときには体温をあえて上げて発熱を起こし、ウイルスと戦いやすい環境を作ります。冬の渡り鳥は長距離を飛ぶ前に、あえて体に脂肪をため込んで「燃料」を増やします。どちらも、その時々の状況に合わせて体のバランスをわざと変えることで、生き延びるための工夫をしているわけです。
このような変化は、本来は体を守るための素晴らしい反応です。しかし強いストレスが長期間続いたり、軽いストレスでも頻繁に積み重なったりすると、この調整システムにだんだん無理が生じてきます。
ずっとフル稼働している機械の部品が少しずつすり減っていくのと同じように、神経・ホルモン・免疫のチームにも「摩耗(まもう)」が蓄積してくるのです。医学的には、こうした負担の蓄積を「アロスタティック負荷(allostatic load)」と呼びます。
このアロスタティック負荷が大きくなりすぎた状態が、私たちが日常的に言うところの「自律神経の乱れ」の正体の一つと考えられています。検査で大きな異常が見つからないのに、「疲れが抜けない」「頭痛や肩こり、めまいが続く」といった状態は、体のどこか1か所の問題というより、こうした“頑張りすぎによる摩耗”が背景にあることが少なくありません。
ストレスの種類によって「呼び出しボタン」が違う
「ストレス」と一言でまとめてしまいがちですが、実際には、その内容によって体の反応パターンは異なります。研究では、ストレスの種類ごとに、どのメンバーがどれくらい動員されるかの「組み合わせ」が異なると示されました。ストレスの種類によって、押される「メンバーの呼び出しボタン」が違うと考えれば、分かりやすいかもしれません。
たとえば、寒さのストレスにさらされると、まず自律神経、とくに交感神経が中心になって働きます。血管をギュッと縮めて熱が逃げにくい状態をつくり、体温を保とうとします。
一方、低血糖(血糖値が下がった状態)や強い不安にさらされた場合には、アドレナリンなどのホルモンが強く動員されます。血糖値を上げ、心拍数や血圧を高めて、「今すぐエネルギーを使える状態」を整えます。
このように、同じ「ストレス」という言葉で表現されていても、神経・ホルモン・免疫のどの組み合わせが、どの程度働いているのかはストレスの種類によって異なります。
さらに、免疫系が関わるストレス(感染症、慢性的な炎症、自己免疫の問題など)の場合には、神経やホルモンの働き方もまた違ったパターンを示すことが分かっています。
加えて、年齢を重ねることによる変化も見逃せません。安静時の検査の数値は一見正常でも、寒さ・暑さ・運動・食事といった「変化」に対して、細かくバランスを調整する力が少しずつ落ちてくることがあります。若い頃は一晩寝れば回復していた疲れがなかなか抜けないとか、季節の変わり目や気圧の変化で体調を崩しやすくなるといった実感は、こうした調節力の低下とも関係していると考えられます。
乱れを整えるためにできること
では、この「乱れ」を整えるために、私たちにできることは何でしょうか。ここからは、Goldstein が提唱する「拡張された自律神経系」の考え方を踏まえた、鍼灸師としてのアドバイスになります。
まず大切なのは、ご自身の体が今、どのようなストレスに対して「適応しようとして頑張りすぎているのか」を知ることです。天気の変化、仕事や家庭のストレス、ホルモンバランスの揺らぎなど、体はさまざまな外側の変化に対して懸命に調整を続けています。症状は、その調整がうまくいかなくなってきたときの「サイン」として現れてきたものであると捉えることができます。
自律神経のバランスが崩れるメカニズムを知ったうえで、「自分(の感じ方)に問題があるからつらい」と一方的に考えるのではなく、「今の状態は体が精一杯対応してくれている結果」と捉え直すことが大切です。
これは、単なる「前向きな思い込み」ではなく、からだのしくみを理解したうえで、症状の意味づけを少し調整するためのテクニックと言えます。こうした工夫を取り入れるだけでも、症状や自分の体に対する見え方が変わっていきます。
この「捉え直し」は、慢性疼痛などの治療に用いられる認知行動療法(CBT)にも通じる視点です。CBT では、症状そのものだけでなく、「その症状をどう受け止めているか」「どんな行動につながっているか」といった考え方や行動パターンを一緒に整理していきます。その結果、痛みや倦怠感などの身体症状が軽くなったり、症状との付き合い方が楽になったりすることが報告されています。自律神経の乱れと関連する身体症状についても、こうした心理療法が症状の軽減に有効であったとする報告があります。
もう一つ大切なのは、「摩耗したシステムを休ませる」ことです。睡眠や休息の質を整えること、負担になっている予定や役割を一度見直してみること、体に合っていない生活リズムを少しずつ調整していくことなど、小さな工夫の積み重ねが、アロスタティック負荷(たまり過ぎた“頑張りのツケ”)を減らしていくことにつながります。
そして、(病院での診察を前提として)鍼灸のように薬を使わず体の調節機能をサポートする方法も、選択肢の一つになり得ます。
三重県津市のじねん堂はり灸治療院では、患者一人ひとりの「乱れ」の背景を丁寧にうかがいながら、神経・ホルモン・免疫のチームワークがスムーズに働きやすい状態づくりをお手伝いします。「なんとなくつらい」「検査では異常がないと言われたけれど不調が続く」といったお悩みも、どうぞ一人で抱え込まずにご相談ください。
【参考文献】
Goldstein DS. Stress and the “extended” autonomic system. Auton Neurosci. 2021 Dec;236:102889.

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