
本当に効果があるの?
そう感じた方にこそ知ってほしい、鍼灸と近赤外線照射(スーパーライザー)によるアプローチの根拠。
本記事では、国内外の研究と臨床実績から、突発性難聴に対する鍼灸と近赤外線照射(スーパーライザー)の併用療法の可能性についてお示しできればと思います。
鍼灸とLLLT(低出力レーザー治療)の併用が注目される背景
突発性難聴は、前触れもなく突然片耳の聴力が低下する疾患であり、その多くは原因不明とされています。耳鼻咽喉科における第一選択はステロイド療法ですが、すべての症例が改善するわけではなく、特に重症例や治療開始が遅れた例では回復が難しくなることもあります。
このような背景から、標準治療を補完する手段として「鍼灸」や「低出力レーザー治療(LLLT:Low Level Laser Therapy)」が注目されています。特に近年では、これらの手法が突発性難聴の仮説的な病因である、内耳の血流障害やウイルス感染、そして自己免疫反応に対して作用する可能性が示唆されています。
国内外の研究と、鍼灸+LLLTの可能性
現在のところ、鍼灸とLLLTとを併用した突発性難聴に関する臨床研究は見当たりませんが、突発性難聴に対する鍼灸とLLLT各々の研究に目を通すと、併用の利点が見えてきます。
鍼灸単独での効果
Ren(2024)の研究(複数の臨床試験結果を統合して全体傾向を導き出す「メタアナリシス」)では、鍼治療を受けた突発性難聴患者は、対照群と比べて有意に聴力改善が見られたと報告されています。また、Shiら(2024)の研究では、発症から1週間以内の鍼灸開始が治療効果を大きく左右することが明らかになりました。これらの報告では、鍼灸による神経修復や局所血流改善が、病態初期において有利に働く可能性が示唆されています。
さらに、鍼灸治療は自律神経系への調整作用や局所の血流改善を通じて、内耳機能の回復を促す可能性が指摘されています。Eshkevari(2013)の動物研究では、鍼刺激がストレス反応に関わる神経内分泌系の経路を抑制すると報告されています。これらの作用より、交感神経の緊張や炎症性因子の放出が制御され、結果的に耳の回復環境が整えられる可能性があります。
LLLT単独での効果
LLLTに関しては、Mirvakili(2014)が報告したランダム化比較試験において、感音性難聴を伴う難治性耳鳴り患者に対してLLLTの耳道照射(耳の穴に照射)を行った結果、耳鳴りの重症度や生活への影響を点数化するTHI(耳鳴インベントリ)および、主観的な不快感の程度を0〜10で評価するVASスコアにおいて有意な改善が確認されました。Chen(2020)による複数の研究結果の分析においても、一定条件下で耳鳴・難聴症状に対するLLLTの有効性が確認されています。
また、田畑ら(2004)は、突発性難聴患者に対し星状神経節ブロックと上頸神経節近傍への近赤外線照射を併用した結果、治癒率・有効率が従来よりも有意に向上したと報告しました。これはLLLT単体での効果を示すものではありませんが、星状神経節ブロックの代替として星状神経節近傍へのLLLT照射が行われることは一般的であり、星状神経節および上頸神経節近傍へのLLLTによって、単独部位への照射よりも治癒率・有効率が高まる可能性を示唆するものと言えます。
鍼灸+LLLT併用の可能性
先述のとおり、現在のところ鍼灸とLLLTを併用した突発性難聴への直接的な臨床研究やメタアナリシスは確認されていません。しかし、両者がそれぞれに内耳への血流改善や神経機能調整、炎症抑制、自律神経の安定化といった作用を持ちつつ、鍼灸は内耳周囲の血流や神経伝達を整えることを得意とし、LLLTは細胞代謝や炎症応答に直接働きかけるという特徴があることから、それぞれの効果を補完し合う可能性も考えられます。特に、安全性の高いスーパーライザーによる照射は、鍼治療と組み合わせても身体への負担が少なく、現実的な選択肢となり得るでしょう。
LLLT(近赤外線照射)のメカニズム:血流・神経・細胞への作用
突発性難聴の一因とされる「内耳循環障害」は、極めて微細な血流障害でも聴力低下を招くことがあります。Hamblin(2017)は、近赤外線による光バイオモジュレーション(光によって細胞の働きを整える仕組み)が細胞内のエネルギー工場であるミトコンドリアに作用し、細胞のエネルギー産生(ATPの増加)を促し、老化や炎症の原因となる酸化ストレスを軽減し、炎症物質(TNF-αやIL-6など)の働きを抑えることで、組織の回復を後押しすると述べています。
星状神経節や上頸神経節といった交感神経系への光刺激は、交感神経の過緊張を鎮め、副交感神経の活動を促します。結果、内耳の血管拡張が成されると考えられています。また、耳道を通じて直接内耳周囲に照射された近赤外線は、内耳の代謝や神経修復に作用するとされています。
以上のような作用により、局所の血流改善や神経伝達の正常化が期待されます。
当院での実際:どのように施術しているのか
三重県津市にある「じねん堂はり灸治療院」では、突発性難聴に対し、以下のようなアプローチを実施しています。
- 鍼灸施術
頸部(胸鎖乳突筋周囲)、耳周囲のほか、ふとももや手に鍼をします。同時に、耳閉感やめまい、肩こり等の軽減も図ります。 - 近赤外線照射(スーパーライザー)
星状神経節(およびC2上頚神経節)付近、頚部、耳道への照射を行い、微小循環改善と神経機能の調整を図ります。照射時間は1部位あたり7~10分程度です。 - 施術頻度と経過
原則、週2回の施術を5回行い、状態を評価します。改善が見られれば、症状固定となるまで施術を継続します。聴力の回復が頭打ちとなった後も、随伴症状(耳閉感・耳鳴りなど)の緩和を目的に施術を継続される方もいらっしゃいます。
さいごに
突発性難聴に対する鍼灸と近赤外線照射(LLLT)の併用は、複数の文献により血流改善、神経修復、炎症抑制、ストレス応答の調整といった多面的な作用が示唆されています。ステロイド療法に加えて、こうした補完手段を早期から取り入れることは、回復の可能性を高める選択肢として検討に値すると思われます。
医療機関との連携を保ちながら、納得のいく治療を選ぶ──三重県津市のじねん堂はり灸治療院は、その一助となり得る鍼灸院です。
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