円形脱毛症診療ガイドライン2024徹底解説 〜医師の治療方針の裏側にある考え方を知る〜

 円形脱毛症は、ある日突然、髪の毛が抜けてしまうことがある病気です。外見の変化が大きいため、症状そのものだけでなく心理的なショックや不安も少なくありません。
 2024年、日本皮膚科学会から「円形脱毛症診療ガイドライン2024」が公表されました。これは、皮膚科医が診療の現場で円形脱毛症の治療方針を考える際の「枠組み」となる文書です。どの治療法をどのくらい勧めるかを、最新の研究結果と日本の医療制度の実情を踏まえて整理したものといえます。

 今回は、この枠組みを前提として、診断や治療がどのように位置づけられているかを見ていきます。

本記事の目的は、医師のための診療ガイドラインの内容を患者向けに分かりやすくまとめ、知識を提供することにあります。とはいえその知識は、患者自身が診断や治療を自己判断するためのものではありません。「病院でこう説明されたのはなぜか」「なぜこの治療が選ばれたのか」を理解しやすくするためのものです。
治療方針を決めるのはあくまでも医師であることをご承知おきください。

目次

円形脱毛症診療ガイドライン2024で変わったこと

 日本皮膚科学会の円形脱毛症診療ガイドラインは、2010年版、2017年版に続き、2024年版が3回目の改訂にあたります。いずれも、円形脱毛症に詳しい皮膚科医が、国内外の研究結果や実際の診療経験をもとに、「どの治療法にどの程度の医学的根拠があるか」をまとめた文書です。
 2010年版・2017年版と比べると、2024年版にはいくつかの変化があります。
 ひとつは、JAK阻害薬など比較的新しい薬剤が、重症例・難治例に対する選択肢としてガイドライン上でも明確に位置づけられたことです。これにより、これまで治療が難しかった広範な脱毛や長期化した症例に対して、薬剤治療の選択肢がはっきり示されました。
 もうひとつは、「AA-cube」と呼ばれる考え方が導入された点です。これは、年齢、脱毛の重症度、病気の勢い(急性期か慢性期か)という三つの要素を組み合わせて、円形脱毛症の状態を三次元的に表現するための枠組みです。どの治療法が、どのような状態の患者像に対して検討されることが多いのかを、図として示すために用いられています。
 あわせて、治療法を評価する仕組みそのものの見直しも実施されました。皮膚科専門医が日常診療で実際に用いている治療法を中心に評価対象を絞り込み、その中でエビデンス(研究結果)と実用性を踏まえて推奨度を決めています。その結果、現在の日本の皮膚科診療ではあまり行われていない治療法や、円形脱毛症に対するデータが限られている治療法の一部は、「評価の対象外」として扱いが整理された形になっています。

 このように、2024年版ガイドラインは、これまでの考え方を引き継ぎつつも、新しい薬剤の登場や診療現場での実際の使われ方を反映させて、「現在の標準的な治療の姿」をあらためて描き出した内容になっています。本記事では、この枠組みを前提として、診断や治療の選択がどのような考え方にもとづいて進められているのかを順に見ていきます。

円形脱毛症の診断と検査

 ガイドラインには、治療だけでなく診断に関する記述も含まれています。円形脱毛症の診断は、皮膚科医による視診・問診を中心に、必要に応じて検査を組み合わせて行われます。

 頭皮や体毛の観察では、円形もしくは地図状に脱毛した部分の有無だけでなく、髪の太さや折れ方、脱毛斑の縁に残る短い毛の特徴などが確認されます。ダーモスコピーと呼ばれる拡大鏡を用いると、「黒点」や「感嘆符毛」など、円形脱毛症に特徴的な所見が捉えられることがあります。

黒点:
毛包への免疫細胞の攻撃によって、毛が毛穴の中で根元から折れてしまい、黒い点のように見えている状態。円形脱毛症の活動期に見られる。
感嘆符毛:
根元が細く、毛先に向かって太くなっていて、感嘆符(!)のように見える短い毛のこと。毛包への免疫細胞の攻撃によって、毛の形成が途中で障害されて弱くなっていることを示す。円形脱毛症の活動期に見られる。

 症状や病歴から、別の病気の可能性が考えられる場合には、血液検査や甲状腺機能検査、まれに皮膚生検(皮膚の一部を採取して顕微鏡で観察する検査)が行われます。これらは、円形脱毛症とよく似た脱毛を起こす他の疾患との区別に用いられます。
 髪をつまんで軽く引っ張る「ヘアプルテスト(牽引試験)」も診療の場で用いられることがあります。軽い力でも何本も抜けてくる場合には、毛根の炎症が比較的活動性の高い時期である可能性が考えられます。こうした診察所見や検査結果が総合的に評価され、そのうえで治療の必要性や重症度、病期などが判断されていきます。

円形脱毛症の治療法:推奨度と標準治療の考え方

 ガイドラインでは、各治療法に次のような「推奨度」が付されています。

  • 推奨度1:行うよう勧められる
  • 推奨度2:条件によっては行ってもよい
  • 推奨度3:現時点では推奨されない

 この区分は、主に臨床研究の結果と安全性、そして日本の医療現場での実用性を踏まえて決められています。

外用ステロイドなどの外用療法

 円形脱毛症の治療として最も広く用いられているのが、ステロイドの塗り薬です。ガイドラインでは、比較的範囲の限られた単発型や多発型の円形脱毛症に対して、ステロイド外用は「推奨度1」として位置づけられています。特に小児から若年者において重要な治療手段とされています。
 ステロイド外用薬には、炎症を抑える力の強さが段階的に分かれた複数の製剤があり、脱毛の範囲や部位、年齢、皮膚の状態などに応じて種類や塗布期間が調整されます。同じ場所に長期間、強いステロイドを使用すると、皮膚が薄くなる、毛細血管が目立つといった局所の副作用が生じるおそれがあるため、医師の指示に基づいた使用が前提となります。
 カルプロニウム塩化物(フロジン液など)のような血流改善作用を持つ外用薬は、主に併用療法として取り入れられています。頭皮の血流を促すことで毛包の環境を整えることが期待されていますが、単独で強い発毛効果がある治療というよりは、他の標準治療と組み合わせて用いられることが多いとされています。

局所注射・点滴を含む注射療法

 ステロイド局所注射は、成人の限局した円形脱毛症に対して高い発毛効果が期待できる治療として位置づけられています。ガイドラインでは「推奨度1」とされ、標準治療の一つです。脱毛斑に直接ステロイドを注射する方法で、比較的少ない回数で毛の再生がみられることもありますが、注射時の痛みや、まれに皮膚のへこみや色素沈着といった副作用が問題となることがあります。そのため、主に成人が対象となり、小児への実施には慎重な判断が求められます。
 ステロイドパルス療法は、重症で急速に進行する例に対して、短期間に大量のステロイドを点滴する治療です。発症からの時間が短い重症例において、進行を抑えたり回復を促したりする可能性があるとされていますが、再発のリスクや全身的な副作用(不眠、気分変調、血糖上昇など)もあるため、ガイドラインでは「推奨度2」とされ、症例を選んで実施されます。

内服薬(飲み薬)の効果とリスク

 日本で長く使われてきたセファランチンやグリチロンなどの内服薬は、血流や免疫、炎症反応への作用を通じて円形脱毛症に対して一定の効果が期待されるとされています。多くの場合、外用薬や注射療法など他の治療法と組み合わせて使用されます。ガイドラインでは「推奨度2」の位置づけであり、「標準治療の一部として行ってもよい」程度の扱いです。服用していれば必ず毛が生えるという種類の薬ではないことが、研究結果からも示されています。
 ステロイドの内服は、急激に進行する重症例に対して一時的に行われることがあります。短期間の使用で炎症を抑えたい場合には有用である一方、長期間継続すると糖尿病、骨粗鬆症、感染症などのリスクが高まるため、漫然と飲み続けることは推奨されていません。
 近年注目されているJAK阻害薬は、重症かつ難治性の円形脱毛症に対して高い発毛効果を示した新しい内服薬です。ガイドラインでは、一定以上の重症度を満たす成人に対して「推奨度1」と位置づけられています。感染症や血栓症などの重大な副作用が起こる可能性があるため、投与前後の血液検査やリスク評価を含め、皮膚科専門医の管理のもとで使用される薬剤です。適応となるかどうかは、重症度や既往歴などを含めた医師の判断に委ねられることとなります。

市販の製品やシャンプーは治療に有効か?

 ガイドラインでは、カルプロニウム塩化物(フロジン液など)の外用は、頭皮の血流を促進する作用があり、「併用療法の一つとして行ってもよい(推奨度2)」とされています。単独で強い発毛効果を期待するというよりは、他の標準治療と組み合わせて用いられる位置づけです。
 ミノキシジル外用(いわゆる発毛剤)についても、海外の臨床研究結果などをもとに「行ってもよい(推奨度2)」と整理されています。ただし、日本国内で承認されている効能・適応は、主に男性型脱毛症など別の病型に対するものであり、円形脱毛症に対する使用は添付文書上の効能とは異なる場合があります。
 市販の育毛シャンプーやトニック、サプリメントなどは、頭皮を清潔に保つ、かゆみやフケを抑えるといった意味で「頭皮環境を整える目的」で用いられることが多い製品です。しかし、ガイドライン上では、これらが円形脱毛症そのものを治す治療として高いエビデンスを持つとは位置づけられていません。

病院診療を選ぶべきタイミング

 円形脱毛症の経過には、時間の経過とともに自然に軽快していく症例と、脱毛斑が拡大し、全頭あるいは全身に及ぶ重症例へ移行する症例とが含まれます。ガイドラインでも、このような経過や重症度の幅を前提として、病型や重症度の分類が行われています。
 突然、指でなぞれるような円形の脱毛斑が出現した場合や、短期間で脱毛範囲が広がっている場合には、円形脱毛症かどうかの診断と、他の脱毛症との鑑別が課題になります。診察では、脱毛の範囲や分布に加えて、ヘアプルテスト(牽引試験)、ダーモスコピー/トリコスコピーによる頭皮所見などを組み合わせて評価することが示されています。
 脱毛が数か月以上持続する症例や、再発を繰り返す症例では、これまでの経過や実施されてきた治療内容を整理したうえで、どのような治療選択肢がありうるかが検討されます。重症例や難治例では、局所免疫療法や経口JAK阻害薬など、ガイドラインで取り上げられている治療法の適応が議論の対象となることがあります。
 いずれの場合も、診断・鑑別診断・治療の要否および内容については、診察結果を踏まえて、担当医がガイドラインなどを参考に判断することになります。

受診のタイミングについて
ガイドラインには、「どの時点で病院を受診すべきか」という具体的なタイミングについての明示的な記載はありません。とはいえ、一般論としては、脱毛が気になり始めたり、円形の脱毛斑に気づいたりした時点で、一度皮膚科を受診しておくことが勧められます。

皮膚科?内科?適切な診療科の選び方

 円形脱毛症の診療の中心となるのは皮膚科です。診断の確定、治療の選択、経過の観察は、まず皮膚科で行われます。
 一方で、円形脱毛症は甲状腺疾患や自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎など、他の病気と併せてみられることも知られています。その場合、必要に応じて内科、膠原病内科、小児科などの専門診療科と連携しながら治療が進められます。血液検査の結果などをもとに、皮膚科から他科へ紹介されることもあります。

 円形脱毛症に関わる診療科の役割分担としては、皮膚科が中心となりつつ、合併症や全身状態に応じて他科が関わる、という構造が基本と言えます。

医療費・保険適用について

 円形脱毛症の治療には、保険診療として行われるものと、自費診療となるものがあります。ステロイド外用や局所注射、セファランチンなどの内服薬、多くの紫外線療法、重症例に対するJAK阻害薬などは、保険診療で行われる代表的な治療です。自己負担割合(3割負担など)に応じて費用が決まります。
 局所免疫療法(SADBEやDPCPを用いる方法)は、重症かつ難治性の円形脱毛症に対して有効性が報告されている治療ですが、現時点では保険適用外として扱われ、自費診療で実施されている医療機関もあります。費用や通院頻度、治療に伴う刺激感などに留意が必要な治療です。
 ウィッグ(かつら)は治療そのものではありませんが、生活の質を保つうえで重要な役割を担うことがあります。外見の変化に伴う心理的な負担を軽くし、学校や職場、社会生活に参加しやすくするための道具として用いられています。円形脱毛症診療ガイドライン2024では、かつら(医療用ウィッグ)の使用について、外見上の悩みや生活の質を補う手段として「有用(推奨度1)」と位置づけられています。

医療用ウィッグ購入費用の助成制度について
医療用ウィッグの購入費を助成する制度は、円形脱毛症診療ガイドラインとは別に、各自治体が独自に設けている仕組みです。多くの自治体では、がん治療に伴う脱毛や外見の変化に対するアピアランスケアの一環として位置づけられており、助成の対象も主として「がんの治療を受けた方」に限られています。
一方で、千葉県流山市のように、がんに加えて全頭型・汎発性脱毛症などの脱毛症も医療用ウィッグ助成の対象に含める「流山モデル」と呼ばれる取り組みを行っている自治体もあります。ただし、このように脱毛症まで明示的に対象とする制度は、現時点では全国的に見てごく少数にとどまります。
医療用ウィッグ購入の助成の有無や、対象となる疾患、助成額・条件などは自治体ごとに大きく異なります。実際の利用を検討される場合は、お住まいの自治体が公表している最新の制度情報を個別に確認する必要があります。

ガイドラインに基づく治療法とエビデンスの考え方(鍼灸と光線療法)

「円形脱毛症診療ガイドライン2024で変わったこと」の章で触れたように、2024年版ガイドラインでは「日常診療で用いられている治療法」を中心に評価対象が選ばれています。本章では、その枠組みの中で各治療法がどのような役割を持つのかを、推奨度とエビデンスの観点から見ていきます。

 ガイドラインでは、治療法ごとに「推奨度」と、その背景となるエビデンスの質が示されています。臨床試験で効果が明確に示されている治療ほど推奨度が高くなり、研究結果がまだ少なかったり、結果がばらついていたりする治療は推奨度が低くなります。
 2024年版のガイドラインでは、「皮膚科専門医が日常診療で実際に用いている治療法で、一定の普及度があるもの」が評価の対象として選ばれ、その中でエビデンスと実用性を踏まえて推奨度が決められています。そのため、通常は皮膚科外来で行われない治療法は、評価表には載っていない場合があります。

 2017年版では、鍼灸治療について「行わないほうがよい」とする記載がありました。また、直線偏光近赤外線照射療法(いわゆるスーパーライザー)などの光線療法については、単発型・多発型の円形脱毛症に対する併用療法の一つとして「行ってもよい」と評価されていたものもあります。一方、2024年版では、紫外線療法以外の光線療法について、有効性を裏付けるデータが現時点では不足していると判断され、円形脱毛症に対しては「推奨しない治療」として扱われています。鍼灸については、評価の対象となる治療法一覧から外れ、ガイドラインの本文では取り上げられていません。
 これは、鍼灸や近赤外線照射が「禁止された」という意味ではなく、「皮膚科医が自ら行う標準治療として検討する対象から外れている」という現状を反映したものと考えられます。ガイドラインは、皮膚科診療における標準治療を示す文書であり、その枠の外側で行われる補完療法までを網羅する意図はもともとありません。

 三重県津市のじねん堂はり灸治療院で行っている鍼灸や近赤外線照射は、こうしたガイドライン上の扱いを踏まえたうえで、「毛を直接生やす標準治療」としてではなく、ストレス反応や自律神経活動、末梢循環、炎症・酸化ストレスなど、円形脱毛症の発症や再燃に関与しうる全身の生体反応に間接的に働きかける手段として考えています。円形脱毛症に対して鍼灸単独で明確な発毛効果を期待するというよりも、皮膚科で行われる標準治療と並行しながら、こうした背景因子の負荷を和らげ、標準治療の効果が発揮されやすい全身状態を保つことを目標としています。ただし、これらの作用が実際に円形脱毛症の経過にどの程度寄与するかについては、今後の臨床研究の蓄積が必要とされます。

発症に関連する免疫・アレルギーとストレス

 円形脱毛症は、毛根を包む組織(毛包)が、自分自身の免疫細胞から攻撃されてしまうことで起こる「自己免疫性」の機序が関わると考えられています。毛包には本来、免疫系から守られる仕組みが備わっていますが、このバランスが崩れると、成長期の毛包が標的となり、脱毛が生じるとされています。
 アトピー性皮膚炎や気管支喘息、アレルギー性鼻炎など、いわゆるアトピー素因をもつ人では、円形脱毛症を合併しやすく、重症化しやすい傾向が報告されています。皮膚のバリア機能や免疫の働きが不安定になりやすいことが、その一因と推測されています。
 また、精神的なストレスも、円形脱毛症の発症・増悪に関与する要因としてしばしば挙げられます。ストレスにさらされると、自律神経のうち交感神経が優位になり、ホルモンの分泌パターンが変化します。この変化が炎症反応や免疫のバランスに影響を与え、毛包周囲の環境を悪化させる可能性が指摘されています。とはいえ、「ストレスさえなくせば必ず治る」というほど単純な関係ではなく、遺伝的な体質や他の環境要因と重なって、発症や経過に影響していると考えられています。

患者さんに知ってほしい最新の研究動向

 円形脱毛症診療ガイドライン2024は、皮膚科診療で用いられる標準治療を中心にまとめられた文書です。一方で、その枠組みの外側でも、将来の診療やケアの考え方に影響しうる研究が世界中で進んでいます。
 ここからは、ガイドラインに直接は書かれていない話題も含めて、円形脱毛症の理解を深めるための「補足的な研究トピック」をいくつか紹介します。なお、ここに挙げる内容は、現時点で円形脱毛症の標準治療として推奨されるものではなく、もちろん、患者さんが治療法を自己判断で選ぶための情報でもないという点をご承知おきください。

 腸内細菌叢(腸内フローラ)と円形脱毛症との関係を探る研究では、患者と健康な人で腸内細菌の構成が異なる可能性が報告されています。腸内細菌は免疫の働き全体に関わっているため、腸内環境の乱れが自己免疫性の病気の背景に存在するのではないか、という仮説が立てられています。ただし、現時点では「特定の菌を増やせば円形脱毛症が治る」といった具体的な治療法に直結する段階には至っていません。

 また、体内の「酸化ストレス」(細胞や組織にとってのサビのような負担)が毛包の環境を悪化させているのではないか、という視点からの研究もあります。酸化ストレスが高まると、細胞の損傷や炎症反応が促進されるため、毛包にとっても不利な条件が重なりやすくなります。抗酸化作用をもつ栄養や生活習慣の改善が、どの程度円形脱毛症に影響するのかについては、今後のデータの蓄積が必要とされています。

 鍼灸に関しては、円形脱毛症そのものを対象とした大規模な臨床研究はまだ限られています。
 一方で、他の疾患や基礎研究のレベルでは、鍼刺激によって自律神経の活動が変化したり、皮膚や筋肉の血流が増加したり、炎症性物質や酸化ストレスに関わる分子の動きが変わったりすることが報告されています。これらの作用が、頭皮を含む末梢の血流や、自律神経を介したストレス反応、腸内細菌叢、全身の炎症・酸化ストレス環境といった円形脱毛症の病態にも影響しうる可能性が指摘されていますが、実際に患者さんの毛量や経過にどの程度結びつくのかについては、まだ明らかではありません。
 現時点では、鍼灸はストレスや睡眠、自律神経症状、血行不良など、円形脱毛症の背景要因に対する補完的な介入として考えるのが、利用可能なデータからみた受け止め方として妥当と言えます。

まとめ

  • ガイドラインは、皮膚科医が診療方針を検討するための指針であり、患者が自分で診断や治療内容を決めるためのマニュアルではない。
  • 治療の中心はあくまで皮膚科で行われる標準治療であり、ステロイド外用、局所注射、内服薬、紫外線療法、JAK阻害薬などの中から、年齢・重症度・病期・合併症などを踏まえて、担当医によって組み合わせが判断される。
  • ガイドライン2024年版では、JAK阻害薬などの新しい薬剤が位置づけられたことや、年齢・重症度・病期の三つの軸を組み合わせて考える「AA-cube」が導入されたことなどを通じて、「どのような状態のときに、どの治療を検討するか」の見通しが示されている。
  • 鍼灸や近赤外線照射(LLLT)は、円形脱毛症の標準治療の枠外にある補完療法と考えられる。これは、「皮膚科医が自ら行う標準治療」の評価対象から外れているという意味合いが大きい。
  • 三重県津市のじねん堂はり灸治療院では、皮膚科で行われる標準治療を円形脱毛症治療の「主役」ととらえたうえで、ストレス、睡眠、自律神経、血流、冷えなど、円形脱毛症の病態に関与しうる全身の反応を調整することを主な目的として、鍼灸と近赤外線照射を提供している。
  • 本記事は、円形脱毛症について医師から説明を受けた際に、「なぜその選択がなされたのか」を理解しやすくするための資料であり、具体的な治療方針や薬剤選択そのものは、診察・検査にもとづき、担当医の判断と説明のもとで検討されることが前提となる。

【参考文献】
円形脱毛症診療ガイドライン策定委員会. 円形脱毛症診療ガイドライン2024. 日本皮膚科学会雑誌. 2024;134(10):2491-2526.
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