低FODMAP食でIBS(過敏性腸症候群)の症状は改善できる?効果と注意点

 過敏性腸症候群(IBS)は「お腹の痛みや張り、便通の不安定さ」が長く続く病気です。薬だけでは十分にコントロールできないこともあり、食事の工夫が大きな助けになります。
 そのようななか、近年注目されているのが「低FODMAP食」です。三重県津市のじねん堂でも、過敏性腸症候群の患者さんから低FODMAP食について質問を受けたり、すでに実践していると伺ったりしています。とはいえこの食事法、世界中の研究で効果が確かめられてはいるものの、正しい理解に基づいた実践が欠かせないものでもあります。
 本記事では、低FODMAP食の基本から注意点、エビデンスまでわかりやすく解説します。

目次

低FODMAP食とは?

「低FODMAP食」とは、腸で吸収されにくい糖質を一時的に減らすことで、症状をやわらげる食事療法のことです。

FODMAPってなに?──発酵性の糖質グループ

 FODMAPとは Fermentable(発酵性の)Oligosaccharides(オリゴ糖)、Disaccharides(二糖)、Monosaccharides(単糖)、Polyols(ポリオール) の頭文字をとった言葉です。(“A”は“And”:Fermentable, Oligosaccharides, Disaccharides, Monaccharides, And Polyols)
 これらは小腸で吸収されにくい糖質で、大腸に届くと腸内細菌により発酵し、大量のガスや酸を発生させます。その結果、腸が過敏に反応して痛みや膨満感を起こしやすくなります。

腸で吸収されにくく、ガスやお腹の張りを起こしやすい理由

 吸収されない糖質は腸管内に水分を引き込み、下痢を助長することがあります。さらに、大腸での発酵によりガスが生じるため、お腹の張りや痛みが強く出やすくなります。IBSの患者さんではこの影響を受けやすく、症状を強めることにつながります。

なぜIBSに効果があるのか

 低FODMAP食が注目されるのは、IBSで多くみられる腹痛や膨満感を軽くするメカニズムがあるからです。

IBSの主な症状(腹痛・下痢・便秘・膨満感)

 過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛や下痢・便秘、お腹の張り(膨満感)が長期間にわたり繰り返される病気です。器質的な異常はなく、「脳腸相関」と呼ばれる脳と腸のやり取りの不調が大きく関わっています。

低FODMAP食で症状がやわらぐメカニズム

 低FODMAP食では、吸収されにくく腸に負担をかける糖質を制限します。その結果、

  • 腸管内に水分が過剰に流れ込むのを防ぎ、下痢を抑える
  • ガスの発生を減らし、お腹の張りや痛みを軽くする

といった作用が得られ、IBSの代表的な症状の改善につながります。
 実際に複数のRCTで、腹痛・膨満感・便通異常が改善することが示されています。

RCT:ランダム化比較試験
対象者を無作為に複数のグループに分け、それぞれに異なる治療法を行い、その結果を比較することで、治療の効果を客観的かつ公平に検証する研究手法。信頼性の高い証拠(エビデンス)を得られるため、特に医療分野で重視されています。

実際にどんな食品を避けるのか(摂りやすい食品も)

「食べてはいけないもの」「食べてもよいもの」が整理されているのが低FODMAP食の特徴です。

高FODMAP食品の代表例(小麦・玉ねぎ・リンゴなど)

  • 穀物:小麦、ライ麦、大麦(パン・パスタ・ラーメンなど)
  • 野菜:玉ねぎ、にんにく、アスパラガス、カリフラワー、ごぼう
  • 果物:リンゴ、梨、スイカ、マンゴー
  • 乳製品:牛乳、ヨーグルト、リコッタ・モッツァレラチーズ
  • 豆類・ナッツ:納豆、カシューナッツ、ピスタチオ、小豆
  • 甘味料:ハチミツ、高果糖コーンシロップ、ソルビトールやキシリトール

低FODMAP食品の代表例(米・にんじん・バナナなど)

  • 穀物:米、玄米、十割そば、オートミール、米粉製品
  • 野菜:トマト、ナス、大根、レタス、にんじん、きゅうり
  • 果物:オレンジ、みかん、ぶどう、キウイ、いちご、パイナップル
  • 乳製品:アーモンドミルク、チェダー・パルメザン・カマンベールチーズ、バター
  • ナッツ:ピーナッツ、クルミ、アーモンド(少量)

高FODMAP食品と低FODMAP食品のまとめ表

食品グループ高FODMAP(避ける)低FODMAP(摂りやすい)
穀物小麦、ライ麦、大麦(パン・パスタ)米、玄米、十割そば、オートミール
野菜玉ねぎ、にんにく、アスパラガス、カリフラワートマト、ナス、大根、レタス、にんじん
果物リンゴ、梨、スイカ、マンゴーオレンジ、みかん、ぶどう、キウイ、いちご
乳製品牛乳、ヨーグルト、リコッタチーズアーモンドミルク、チェダー・パルメザンチーズ
豆類・ナッツ納豆、カシューナッツ、ピスタチオ固めの豆腐、ピーナッツ、クルミ、アーモンド(少量)
甘味料ハチミツ、高果糖コーンシロップ、ソルビトールメープルシロップ、上白糖、オリーブオイル

注意点

 低FODMAP食は有効な方法ですが、やみくもに続けるとデメリットもあります。正しい実践方法を知ることが大切です。

長期的な完全除去は栄養不足のリスク

 低FODMAP食は短期間では有効ですが、長期間完全除去を続けると、食物繊維やカルシウム不足、腸内細菌叢の多様性低下を招く可能性があります。

医師や管理栄養士と相談しながら段階的に実践

 ACGガイドライン2021や日本IBS診療ガイドライン2020では、専門家の管理下での短期間トライアルと再導入が推奨されています。症状が落ち着いた後は、少しずつ制限食品を戻しながら「自分に合う食事範囲」を見つけることが大切です。

従来の食事指導との違いと注意点

 従来の食事指導では「腸内環境を整える」目的で発酵食品や繊維を増やすことが推奨されます。一方で低FODMAP食は「症状を悪化させやすい糖質を一時的に制限する」点が特徴です。

観点従来の食事指導低FODMAP食共通点・補足
避ける食品甘い物、砂糖、人工甘味料、小麦製品、脂っこい食品甘い物、砂糖、人工甘味料、小麦製品、発酵性糖質を含む食品(玉ねぎ、豆類など)基本方針は共通
推奨される食品発酵食品(ヨーグルト、納豆)、可溶性繊維、野菜・果物全般米、にんじん、バナナ、柑橘類など低FODMAP食品従来で「摂る」食品が、低FODMAPでは一時的に「避ける」対象になる場合がある
実践方法習慣改善+食材選び(持続的)短期間トライアル→再導入(専門家のサポート)低FODMAPは「症状が強い時期の戦略」

日本での実践について

 低FODMAP食はオーストラリアで考案された食事法であり、日本のIBS診療ガイドライン2020でも「有効性が報告されている」と記載されています。しかし同時に、「日本の食文化にそのまま適用するには工夫が必要」とも明記されています。
 現時点では「日本版の低FODMAP食」が体系的に確立されているわけではなく、納豆や味噌などの発酵食品や大豆製品をどう扱うか、米を主食とする食生活にどう組み込むかは課題となっています。とはいえ、欧米と食文化の異なる日本やアジアでも有効性は報告されており、自分の食習慣に合わせて無理なく取り入れ、専門家と相談しながら調整していくことが現実的な方法です。

エビデンスのまとめ

 実際の研究で、低FODMAP食はどのくらい効果があるとされているのでしょうか。世界中の調査結果を紹介します。

世界中の研究で確認された「症状改善の効果」

  • Halmos (2014):豪州、RCT。低FODMAP群で 約70%が症状改善、症状スコアは半減
  • Böhn (2015):スウェーデン、RCT。臨床的改善は 低FODMAP群50% vs 従来指導群46%(差なし)
  • Kuzmin (2025):系統的レビュー。改善率は 50〜70%、生活の質も改善。
  • Pouladi (2025):長期解析。1年以上継続しても効果持続。ただし栄養不足に注意。

全員に効くわけではない
 低FODMAP食は半数以上で効果がありますが、全員に有効というではありません。そのため「短期間で効果を確かめる → 再導入で自分に合う範囲を見つける」という段階を踏むことが必須と考えられています。

日本・アジアでの知見

 2025年に報告されたレビューでは、アジア諸国でも改善率は50〜70%と、欧米と同等であることが確認されています。ただし、大豆製品や発酵食品などアジア特有の食材をどう扱うかは課題とされ、食文化に合わせた調整が必要と指摘されています。
 また日本では、田山(2025)によるセルフマネジメントプログラムに低FODMAP食を取り入れた試みが行われ、症状改善や腸内細菌の多様性改善が示されました。ただし、これは「日本版の低FODMAP食を確立したもの」ではなく、取り入れ方の一例にとどまります。

まとめ

 低FODMAP食は、腸で吸収されにくい糖質を一時的に減らすことで、IBS(過敏性腸症候群)の腹痛・下痢・膨満感などを和らげる食事法です。研究では世界的に効果が確認され、半数以上(50〜70%)の患者で症状改善が報告されています。
 とはいえ、長期的な完全除去は栄養不足のリスクがあり、短期間のトライアルと再導入が前提となります。また、欧米と食文化の異なる日本でも有効性は示されていますが、「日本版」として体系化された方法はまだありません。自分の食習慣に合わせ、医師や管理栄養士と相談しながら無理なく実践することが肝要です。

【参考文献】
Halmos EP, Power VA, Shepherd SJ, Gibson PR, Muir JG. A diet low in FODMAPs reduces symptoms of irritable bowel syndrome. Gastroenterology. 2014 Jan;146(1):67-75.e5.
Böhn L, Störsrud S, Liljebo T, Collin L, Lindfors P, Törnblom H, Simrén M. Diet low in FODMAPs reduces symptoms of irritable bowel syndrome as well as traditional dietary advice: a randomized controlled trial. Gastroenterology. 2015 Nov;149(6):1399-1407.e2.
Kuźmin L, Kubiak K, Lange E. Efficacy of a Low-FODMAP Diet on the Severity of Gastrointestinal Symptoms and Quality of Life in the Treatment of Gastrointestinal Disorders-A Systematic Review of Randomized Controlled Trials. Nutrients. 2025 Jun 19;17(12):2045.
Pouladi A, Arabpour E, Bahrami O, Sadeghi A, Mozafari Komesh Tape P, Abdehagh M, Zali MR. Impacts of the Long-Term Low-FODMAP Diet in Patients With Irritable Bowel Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Hum Nutr Diet. 2025 Aug;38(4):e70105.
Lacy BE, Pimentel M, Brenner DM, Chey WD, Keefer LA, Long MD, Moshiree B. ACG Clinical Guideline: Management of Irritable Bowel Syndrome. Am J Gastroenterol. 2021 Jan 1;116(1):17-44.
日本消化器病学会. 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020―過敏性腸症候群(IBS) (改訂第2版). 南江堂, 2020.
Khurana R, Rakhra G. Assessing the Impact of the Low-FODMAP Diet on IBS Management in Asian Countries: A Systematic Review and Meta-Analysis of Evidence. Dig Dis Sci. 2025 Jul 27.
佐藤研, 佐竹立, 櫻庭美耶子, 福田眞作. 一般住民における過敏性腸症候群と食習慣, 腸内細菌との関連について. 心身医学. 2017;57(4):362-367.
田山淳. 過敏性腸症候群のセルフマネジメントプログラム. 心身医学. 2025;65(1):33-37.
High and Low FODMAP Foods. Monash University. https://www.monashfodmap.com/about-fodmap-and-ibs/high-and-low-fodmap-foods/, (参照2025/9/3).
FODMAP食について. おつじ内科クリニック. 2020 Dec 17. https://otsuji-naika.com/pdf/fodmap.pdf, (参照2025/9/3).


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