自律神経の働きの不均衡は、心身に多岐にわたる不調を引き起こす可能性があります。
今回は、自律神経の働きと、そのアンバランスによってあらわれる症状、そして自律神経症状緩和における鍼灸の可能性について、簡単にお伝えできればと存じます。
自律神経系の役割と不調のメカニズム
自律神経系(ANS:Autonomic Nervous System)は、自分の意思とは無関係に、循環、分泌、消化管運動といった身体の様々な生理機能を調節し、体内の恒常性(ホメオスタシス)を維持する上で非常に重要な役割を担っています。
この自律神経系は主に、エネルギーの動員や「闘争・逃走(fight-or-flight)」反応に対応する**交感神経系(SNS)と、休息・回復・消化・吸収といった機能に関連する副交感神経系(PNS)の2つに分類されます。
健康な状態では、これら二つの神経が動的なバランスを保ちながら、その時々の状況に応じて優位性を入れ替えることで、身体の状態を正常に維持していると考えられています。
しかし、このバランスが崩れ、交感神経系が過度に優位になったり、副交感神経系の活動が低下したりする状態(自律神経の不均衡や機能障害)に陥ると、心身の不調が生じる可能性があります。
不調の原因と具体的な症状
自律神経の働きの不均衡は、慢性的な精神的ストレスや生活習慣の乱れをきっかけに生じることが多いとされています。特に慢性的なストレスは、交感神経の持続的な刺激と、迷走神経(副交感神経系の主要な神経)の活動低下を招き、自律神経系の調節不全につながる可能性があります。
自律神経の不均衡に関連して現れる症状は、自律神経の多様な働き同様、多岐にわたり、身体症状としては次のようなものが挙げられます。
- 全身の倦怠感や疲労
- 頭痛
- めまいや立ちくらみ
起立性低血圧など、血圧調節の異常に関連する場合があります - 動悸
交感神経の過活動は心拍数の増加を引き起こす可能性があります - ほてり、冷え、のぼせ
- 不眠や睡眠障害
自律神経機能と睡眠は深く関連しています - 便秘や下痢などの消化器症状
慢性ストレスは腸管運動の調節不全や腸内細菌叢の乱れを引き起こす可能性があり、自律神経系がこれらに関与していると考えられます - 耳鳴り、手足のしびれ、口やのどの不快感
また、慢性的な痛み(例:慢性腰痛)も、交感神経の活動亢進と副交感神経の調節低下を伴うことが報告されています。
さらに次のような精神的な症状も、自律神経やストレス応答系の調節不全と関連していることが示唆されています。
- イライラや焦燥感
- 不安感
- 意欲の低下
- 抑うつ的な気分
自律神経の働きの不均等は、心身両面に不調を生じさせることが分かります。
ストレスにより身体に症状が現れる状態を「自律神経失調症」、心に症状が現れる状態を「うつ」と表現されることがあります。
しかし実際には、自律神経系の不均衡が、不安障害や抑うつ障害といった精神的な不調と同時に、あるいは相互に影響し合いながら、心身両面に症状を呈することも少なくないと考えられています。
鍼灸によるアプローチの可能性
鍼灸は、古くから心身のバランスを整えることを目的として用いられてきた手法であり、現代においても、自律神経系の働きを調整する可能性が研究されています。
心拍変動(HRV:Heart Rate Variability)を指標とした研究では、鍼刺激が心臓迷走神経活動(副交感神経系)を活性化させ、交感神経活動を抑制する方向に作用する可能性が示唆されています。
また、鍼治療による自律神経への影響は、刺激する経穴・奇穴(ツボ)の選択、刺激の強さや刺激方法、そして対象となる患者の体質や健康状態といった複数の要因に依存し、個々の状態に応じて変化しうることが指摘されています。そのため、鍼治療においては、単に「自律神経のバランスを整える」というだけでなく、交感神経の過剰な興奮を抑えたり、逆に低下している機能を補ったり、副交感神経の働きを高めたりと、状態に応じたきめ細かな調整が求められる場合があります。
三重県津市のじねん堂はり灸治療院で採用している古典的な鍼灸治療(経絡治療)や、古典医学と現代医学の両方の観点から効果が期待される特別な経穴の組み合わせを用いた手法は、こうした自律神経系の複雑な調整を目指す上で、有用な選択肢の一つになり得ると考えています。
自律神経に関連する多様な症状でお悩みの際には、その背景にある複雑な心身の状態を踏まえたケアを行うためにも、一度ご相談いただくことをお勧めします。
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