【論文紹介】あなたの卵子、あと何個必要? ~年齢別に「1つの正常胚」を目指す採卵数の目安とは~

 不妊治療を続けていると、ふと立ち止まってしまう瞬間があります。
「これ以上、採卵しても意味があるの?」
「何をどこまで頑張ればいいの?」
 そんな不安や迷いを、誰もが一度は抱えるのではないでしょうか。
 今回ご紹介するのは、スペインの大手不妊治療機関が2,660件もの体外受精(IVF)周期を分析した大規模研究です。この研究では、「年齢ごとに、1つの正常な胚(染色体の整った胚)」を得るために必要な卵子の数を導き出しました。科学的な目安を知ることは、今の自分の状況を冷静に見つめ、「次に何ができるか」を考えるヒントになるかもしれません。

なぜ「正常な胚(正倍数性)」が大切なの?

 体外受精では、良好な見た目の胚を移植しても、染色体に異常があると着床しなかったり、流産につながることがあります。こうした染色体異常は「異数性」と呼ばれ、年齢が上がるほどその割合が増えていきます。
 実際に、以下のようなデータがあります。

年齢正常な胚の割合(目安)
35歳約40%
40歳約20%
43歳以上10%未満

「卵子は採れるけど、移植まで進まない」「胚盤胞が育っても妊娠に至らない」
 それは、胚の中身(染色体)の問題かもしれません。

この研究が教えてくれること

 研究チームは、年齢ごとに「1つの正常な胚(正倍数性胚)」を得るために、何個の成熟卵子(MII卵子)が必要かを計算しました。結果、以下の図のように、加齢ともに必要なMII卵子数は増加していました。

年齢目安となる卵子数(平均)
35歳約5個
38歳約8個
40歳約10個
42歳約14個
44歳約20個以上
45歳以上30個以上でも得られない可能性が高い

 また、1つも正常胚が得られなかった割合も年齢とともに上昇し、35歳では約22%だったのが、42歳では73%、45歳以上では97%にのぼりました。

 これらの結果をグラフに示すと次のようになります。

 赤い棒グラフが年齢ごとに「1つの正常胚を得るのに必要な卵子数」を、青い折れ線グラフが「その年齢で正常胚が1つも得られなかった割合(%)」を示しています。

どう活かせばいいの?

 この研究では、「どの年齢で、何個の卵子があれば、正常な胚を得られたか」という実際の治療データと、「年齢と卵子数から、1つの正常胚を得られる確率」を計算できるモデル(数式)が示されています。じねん堂は、これらのデータやモデル(数式)から、「年齢と卵子数から、正常な胚を1個以上得られる確率」を視覚的にわかりやすく示した図(ヒートマップ)を作成しました。縦軸が年齢、横軸が成熟卵子の数となっており、それらの交わる点が、「正常胚を1個以上得られる確率」です。実測の中央値を使用しているので、患者個人個人の状態には対応できませんが、特定の年齢と卵子数における「目安」として、治療の現実を冷静に見つめる上で非常に有効なツールとなります。

 この科学的な目安を基にすることで、「なかなか1回でうまくいかない」という現実と向き合いながら、次にどんな準備をすればいいかを具体的に考えるきっかけを得られると思われます。
 例えば、次のような視点を持つことができます。

  • 年齢とともに正常な胚を得るために必要な卵子数が増加するというデータを理解し、限られた採卵チャンスをより大切にし、体調や卵胞の育ちを丁寧に見守ること。
  • 1つも正常胚が得られない割合が年齢とともに上昇するという事実から、個々の採卵結果に一喜一憂するのではなく、“トータルでどうするか”という長期的な視点を持つこと。
  • そして、鍼灸など補完療法を併用し、卵子や子宮のコンディションを整えることで、ご自身の身体の状態を最適な状態に導き、妊娠の可能性を高めるための積極的なアプローチを検討すること。

 日本では複数周期にわたって胚を凍結・蓄積する「貯卵戦略」や、ドナー卵子の使用には制度的な制限があるからこそ、「今この1回にどう臨むか」という視点がより重要になります。今回提示したデータとヒートマップが、科学的な根拠に基づきながら、患者さんが「頑張りすぎず、でも後悔しない治療戦略」を練る際の一助となれば幸いです。

PGT-A(着床前遺伝子検査)とは

 この研究で「胚の染色体が整っているか」を確認するために用いられたのが、PGT-A(着床前遺伝子検査)という方法です。
 胚の一部(将来胎盤になる細胞)を検査して、染色体に異常がないかどうかを調べる技術で、欧米では広く行われています。日本でも、反復着床不全や流産のあるケースを対象に一部の施設で行われていますが、誰でも自由に受けられるわけではありません。それでも、PGT-Aのデータから得られたこうした「年齢と卵子数の関係」は、今後の治療計画を考えるうえで参考になる情報といえるでしょう。※PGT-Aについては、別の記事で紹介します。

さいごに

 不妊治療の道のりは、卵子の数や質、そして年齢という、時に厳しい科学的現実と向き合うことを伴います。しかし、これらの情報は、決してご自身を責めるためのものではありません。むしろ、本記事でご紹介したような科学的なデータは、ご自身の状況を客観的に理解し、不安や迷いを乗り越え、前向きに最適な治療戦略を立てるための「羅針盤」となり得るのです。
 じねん堂は、不妊治療のゴールが「妊娠」という結果のみに留まらないと考えています。科学的知見に基づきながらも、「やれることを、きちんとやった」「納得できる選択ができた」という実感があることで、心の安定や次のステップへとつながる場合もあると信じています。
「少しでも妊娠率を上げる方法が知りたい」「今の自分に合った治療の組み立て方を考えたい」そうお感じになった際は、どうぞお気軽にご相談ください。三重県津市のじねん堂はり灸治療院は、最新の科学的データと、鍼灸などの補完的なケアを組み合わせ、患者一人ひとりの状況に深く寄り添いながら、あなたにとって“できること”を共に探し、後悔のない選択をサポートいたします。

参考】
Rodríguez-Varela C, Mascarós JM, Labarta E, Silla N, Bosch E. Minimum number of mature oocytes needed to obtain at least one euploid blastocyst according to female age in in vitro fertilization treatment cycles. Fertil Steril. 2024 Oct;122(4):658-666. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.06.002. Epub 2024 Jun 5. Erratum in: Fertil Steril. 2025 Jul;124(1):178. doi: 10.1016/j.fertnstert.2025.04.017. PMID: 38848954.


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