自律神経症状に対する施術成績

 じねん堂が注力している自律神経症状への鍼灸施術に関して、最新の成績をまとめました。

対象

 平成28年4月1日から平成29年8月1日初療で、2か月以上施術を継続し終了した54名(男性16名、女性38名)、平均年齢36.0±12.0歳。

評価方法

 施術期間終了時に患者から聴取した自覚症状の変化度合いを「無効、やや有効、有効、著効」の4段階に分類しました。(表1)

無効まったく変化が無い、悪化
日常生活を送るうえで明らかな制限を感じている
やや有効ちょっとマシ、楽になった気がする
症状の出る頻度や程度が減少した
日常生活を送るうえで中等度の制限を感じている
有効時々気になることもあるが大分楽
症状は出るがすぐに治まり、程度も軽い
日常生活を送るうえでわずかな制限を感じている
著効ほとんど気にならない
症状が出そうになっても出ずに終わる
日常生活を送るうえで制限を感じていない
表1 評価尺度

 患者は複数の症状を同時に訴えることが多く、また、施術経過の中で一つの症状だけが劇的に変化することは珍しい印象です。大抵はいくつかの症状が同時かいくらかの時間差をもって、変化していきます。症状の元が自律神経の不調なので、自律神経の働きが復調してくれば、複数の症状が同時に改善しても不思議ではありません。
 したがって、評価対象は「一つ以上の症状」とし、そのなかでも最も良好に変化したものを基準としています。評価を患者の口から語られる自覚症状の変化に頼らざるを得ないので、信憑性の面で若干の疑問が残りますが、多くのデータを集めることで、ある程度解消できるのではないかと考えています。

結果

 無効1、やや有効4、有効20、著効29でした。(表2)

表2 施術成績

 有効・著効例を「改善」とすると、改善率は90%となり、著効だけをみると54%となります。

考察

 じねん堂で2か月以上治療を継続すると、大抵のかたは一つ以上の症状が大分楽になり、さらに半分以上のかたは日常生活で気にならなくなるほどに改善すると言えます。
 1年4か月の期間で症例数が54例というのは少ない気もしますが、延べの来院者数は変化していませんので、不妊鍼灸や突発性難聴治療にも注力するようになったり、ホームページの内容を書き替えたりしたことで、来院者の内訳が変化したのだと考えています。

2か月以上施術継続しなかった事例について

 2か月以上継続しなかった方はどれくらいいて、その内訳はどうかというのも気になるかと存じます。
 平成28年4月1日から平成29年8月1日初療で、2か月以上治療を継続しなかったのは24例(男性13、女性11)。うち、著効により治療を終了したものは6例(男性5、女性1)。悪化や無変化、金銭的理由、無断キャンセル等による治療中断は10例(男性5、女性5)。病院・鍼灸院・整骨院等への紹介、その他の理由によって施術をお断りしたものは8例(男性3、女性5)でした。

ドロップアウト例も含めた評価

 悪化や無変化は当然のことですが、金銭的理由や無断キャンセルにおいても、患者が期待していたほどの効果を体感できなかったことがドロップアウトの根底にあると考えられます。
 2か月以上継続しなかった事例の中で、著効により施術を終了したもののみを「改善」に含めると、全78例における改善率は約70%となります。こちらから施術をお断りする場合もありますが、自律神経症状を訴えて来院したすべての患者のうち、7割のかたが大分楽になっていると言えます。
 とはいえ、過去にデータを取った結果「1クール2か月」という目安を設けるに至っていますので、できれば「思ってたんと違う」と感じても、2か月は施術を継続していただきたいのが正直なところです。

さいごに

 以上、じねん堂はり灸治療院の自律神経症状に対する施術の現状をお示ししました。
 今回お示しした54例のデータは、経絡治療前にスーパーライザーによる近赤外線星状神経節近傍照射(以下SL照射)を実施した症例を集めたものです。もとは所属していた鍼灸の流派(経絡治療)の研修会での発表用に、SL照射を行わない57例との比較を行った報告を作成していたのですが、発表する必要が無くなりましたので、一部をこちらで公開する運びとなりました。完全版は、いずれどこかのちゃんとした学会で発表できたら良いと考えています。(追記:第67回全日本鍼灸学会学術大会で発表しました)
 手法の中に客観的な指標を持たない伝統的な鍼灸術(経絡治療)においては、施術の結果を客観的方法で評価し、これらのデータを積み重ねていくことこそ、手法の医療的価値を高める強力な手段であると、じねん堂は考えています。「伝統的な鍼灸」を標榜する流派・団体の一部が、この種の活動に消極的であったり、場合によっては否定的であったりすることが残念でなりません。自らの流派・団体の手法による施術効果の優位性(別の鍼灸の手法や、時には医療と比較して!)を喧伝しているなら猶更です。
 じねん堂は、たとえ「施術結果の客観的指標による評価とデータの集積」に対して消極的あるいは否定的な流派・団体に所属していても、積極的に「施術結果の客観的指標による評価とデータの集積」を行っています。なぜならそれが、患者利益につながると確信しているからです。無効な手法と長引く症状に費用と時間と精神とをすり減らされることなく、有効な手法を受療して、元の日常を取り戻していただきたいからです。
 今回お示ししたデータも、改善率100%ではありません。条件付きで90%。見方によっては50%、場合によってはそれ以下となります。とはいえ、たとえ一つの症状であれ、週1回、2か月の施術で、90%のかたが、 “時々気になることもあるが大分楽” な状態になる施術法であれば、受療をお勧めするだけの価値はあるのではないかと感じています。

 本エントリーが、施術所選択の参考になりましたら幸いです。

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