不妊鍼灸の妊娠率が高くなる理由とじねん堂の姿勢

 以前、不妊鍼灸と妊娠率の関係について、日本産婦人科学会ARTデータブック(2012)にある総ET(胚移植)あたりの妊娠率「全年齢の平均で28.8%」を引き合いに出して、非常に高い妊娠率を謳っている施術所と比較し、その確率が単純には比較できないものであると主張しました。妊娠率の算出方法が治療周期当たりなのか、一人当たりなのかによって数字が大きく変わるという事でした。

 そして、鍼灸による胚移植当たりの妊娠率が特段高くないからといって「鍼灸は効かない」と判断してしまっては早計で、特定不妊治療(体外受精及び顕微授精)の段階の患者は医業による不妊治療を一定期間受け、それでも妊娠できないので鍼灸に頼らざるを得なかったといえるほど妊娠しにくい状態の方である場合が多いため、単純な妊娠率の比較だけでは見えないものもあるだろうとも述べました。

 ところが、鍼灸院にかかるのは、なにも鍼灸に頼らざるを得なかったといえるほど妊娠しにくい状態のかたばかりではないのです。病院で治療を受けるほどではないという自己判断のもと、鍼灸で体調を整えようとするかたも意外なほど多いと、じねん堂は臨床を通じて感じています。そういったかたの中には、鍼灸をせずとも妊娠に至ったであろう事例も一定数含まれていると思われます。このような事例が多ければ多いほど、治療周期当たりの妊娠率も一人当たりの妊娠率も、高いものとなることが推察されます。自己タイミングの段階で治療周期当たりの妊娠率を計算することは稀な気もしますが、敢えて含めることで自院の施術による妊娠率を高く見積もる施設はあるかもしれません。

 ただ、この「自己判断のもと、鍼灸で体調を整えようとする」行為が危険を孕む場合もあります。

 それは、医業による介入が早期に勧められる事例が含まれている可能性があるから。

 病院での不妊治療だけではなかなか結果が出なかったかたの妊娠を助けうる鍼灸ですが、医学的に明らかになっている事実や器質的問題を捻じ曲げてまで治癒し妊娠せしめるほどの力はありません。体質改善とか妊娠準備の名目でダラダラと施術を続けている間に妊娠の機会を無駄にしないため、自己タイミングで妊娠でていない期間によっては鍼灸の前に病院の受診を勧めますし、場合によっては鍼灸の施術をする期間を具体的に提示し、その期間で妊娠できなければ病院に掛かっていただくよう約束していただくこともあります。もちろん、思想信条の問題で病院での不妊治療を行わないということであれば、そちらを尊重しますが……。
 いずれにせよ、じねん堂では常に鍼灸の適応・不適応を意識して施術に臨んでいます。

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