卵子の “おおもと” は原始卵胞?

 結論から申し上げて、原始卵胞は文字通りの “卵子のおおもと” ではありません

 本来の “おおもと” である原始生殖細胞がちょこっと分裂して休眠状態になったものです。卵子という料理の材料を、下ごしらえして冷蔵庫に保管してあるようなものと考えて差し支えないと思います。
 原始生殖細胞が現れるのは、受精してから3週間(!)の時期。そしてちょこっと分裂して休眠状態に入る作業も、妊娠16週以降~生後6カ月の間に行われます。

 何が言いたいかというと、卵子は生まれた時に備わっている以上には増えようが無いということ。

 不妊と鍼灸治療に関して、

  • AMHが原始卵胞から分泌されるという誤認
  • 鍼灸の施術後にAMHの値が上昇したという話
  • 鍼灸によって原始卵胞が増えるという誤った解釈
  • 徒に鍼灸施術の期間を長引かせて患者に不利益を与える可能性

という物語を想起させる出来事に触れる機会があったので書いてみました。

 鍼灸や整体で原始卵胞が増えるといった記述をしている施術所には気を付けてください。最低限必要な現代医学的な知識を備えていないうえに、根拠の無い施術法を妄信している可能性があります。

 ちなみに、AMHは前胞状卵胞の顆粒膜細胞から分泌されるホルモンです。前胞状卵胞は、いわゆる排卵オーディションの過程において、原子卵胞が幾分成長した状態のこと指します。したがって、AMHの値が上昇したからと言って原子卵胞が増えたわけではなく、オーディションの参加者が増えたか、前胞状卵胞の段階で落選する参加者が減ったかだと思われます。鍼灸は、卵巣周囲の血流を改善することによって落選する参加者を減らすことができるのではないかと考えられています。

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