不妊治療とボディビルダー

 先日、知人の男性鍼灸師が「患者さんの気持ちを理解するために基礎体温をつけることにした」旨の発信をされていました。
 体験して感じることに個人差はあれ、患者様に寄り添う姿勢として素晴らしいことだと感じました。

 ところで、不妊治療を行っている方から苦痛だと聞くことに、自己注射があります。排卵をコントロールするために、卵胞の成長を促すhMGや排卵を誘発するhCGというホルモンを自分で注射する方法(ゴナドトロピン療法)が知られていますが、毎日注射をすることが、面倒であり、痛くて嫌でもあるそうです。

 じねん堂に通う患者さん達はそのような印象を持っておられますが、世間一般にはどうなのか。

 インターネットで検索してみると、なぜかサプリメント販売サイトや、アナボリックステロイドを利用しているトレーニーのブログがヒットしてきます。
 それによると、いわゆるステロイドユーザーと呼ばれる方たちはhCGの自己注射を度々行っており、排卵誘発剤として有名なクロミッドの服用も一般的なようです。
 実は、彼らが行うアナボリックステロイド(筋肉増強剤)を注射したり服用したりする行為は、テストステロンに代表される男性ホルモンを外部から大量に取り入れるのと同じです。男性ホルモンが体内に大量に存在することで、筋肉が大きく成長するわけです。
 それだけならよいのですが、外部から男性ホルモンを取り入れ続けると、自分自身の身体で男性ホルモンを作り出す能力が著しく損なわれてしまいます。「ようけあるんやで、もう作らんでええな。」と、身体が判断してしまうのです。
 男性ホルモンを産生するのは精巣(睾丸・キンタマ)。場合によっては、完全に精巣の機能が失われてしまうことすらあるそうです。
 そうならないように、ステロイドユーザーはアナボリックステロイドを一定期間使用した後、精巣機能を回復させる期間も設けています。ステロイドを使用している期間のことを「サイクル」。回復期間に行う手当のことを「PCT(ポストサイクルセラピー)」と呼びます。

 hCGは「性腺刺激ホルモン」ですからその名の通り、そしてクロミッドも精巣の活動を促進します。

 サイクル中やサイクル終了直後に精巣の“気付け”としてhCGを注射し、PCTにおいては精巣機能を回復させるためにクロミッドを服用する。
 どうやらこれが、ステロイドユーザーと呼ばれる方たちに一般的な方法のようです。
 アナボリックステロイドを使用しているボディビルダーのほうが、下手な鍼灸師よりも不妊治療に使う薬剤やその効果について詳しく、自己注射の苦痛に対しても共感できそうですね。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次