肩甲⾻の内側の⾓から少し下にかけての痛みを訴えた事例。
痛みとともに、詰まった感じがして肩を回しにくいとのことでした。
施術・経過
症状を訴えた位置は、いくつかの筋⾁が重なり合ううえに経絡(“気”の経路)も錯綜している場所だったため、東洋医学的な意味で広い範囲をカバーすべく脛の部分に鍼を⼊れました。
その結果、即時に痛みや動かし難さが軽減されました。根本まで鍼を突っ込むのは安全上よろしくないので、写真撮影のあといくらか鍼を浅くしました(抜きました)が、肩の痛みがぶり返すことは無かったのでそのまましばらく時間を置きました。
施術者コメント
董⽒楊⽒奇⽳ではこの事例のように、1本の鍼で⽬覚ましい鎮痛効果を得られることもあります。「肩のこのあたりが痛い」という訴えに対して、その部位と全⾝の経絡や他の部位との関係性を利⽤して鍼をしていきますので、“肩”に対する治療点は無数に存在することになるのですが、そのなかから⼀番効果が得られる点(ツボ)を選べるよう、治療者は細⼼の注意を払っています。
※本事例では、鍼を脛の骨と皮の間に浅く長く刺している状態なので、身体を動かした際に筋肉によって鍼が曲げられたり折られたりといった危険性はありませんが、何かの拍子にタオルや衣服で引っ掛けるなどして鍼柄(しんぺい:鍼の柄の部分)に負荷がかかった場合、鍼体(しんたい:刺さる部分)との接合部で折れてしまう可能性はあります。接合部ぎりぎりまで体内に鍼を刺入していると、接合部で折れた際に鍼が体内に入ってしまって切開しなければ鍼を取り出せない事態に発展する恐れもあります。とはいえ、本事例のような鍼の太さと刺し方であれば、人為的に何度も折り曲げを繰り返しでもしない限り、接合部で折れてしまうようなことは極めて稀であると言えます。万が一を考え、鍼を浅くした(抜いた)次第です。