三重県津市のじねん堂はり灸治療院は、東洋医学の考え方基づいた昔ながらの鍼灸と、エビデンスに基づいた現代的な鍼灸、そして各種運動療法・物理療法を適切に用いた総合的な鍼灸術を謳い、痛みはもとより、お身体の様々な不調に対して施術を行っています。
時に「魔法のよう」と、過分な評価をいただくこともある鍼灸ですが、いかなる症状も⼀回で治してしまう万能の手段ではありません。複数回の施術が必要なこともあれば、施術効果を得られないこともあります。時には一時的な症状の悪化がみられることすらあります。また、鍼を刺すという施術の性質上、痛みや出⾎の可能性からは逃れることができません。
このページではなるべく平易な⾔葉で、鍼灸のネガティブな側⾯についてお伝えします。
ネ ガ テ ィ ブ な 反 応
⾮常に多くのかたが気にされ、鍼による施術を敬遠する理由となるのが、鍼の痛さに関する問題です。
じねん堂は痛くない鍼・やさしい鍼を売り⽂句にする流派の施術も行いますが、中心となるのは中国古典鍼灸である董⽒楊⽒奇⽳や、筋肉や筋膜、神経などをターゲットにした現代的な鍼灸です。これらの鍼は、必要とされる効果を得るために、しっかり刺す必要があり、時にはある種の痛みを発生させなければならないこともあります。
とはいえ、刺すたびに激痛が⾛るわけではありません。以下に、鍼の痛みや不快な⽣理反応について紹介します。
鍼が刺さる時の痛み
鍼が刺さる時に、チクリと痛むことがあります。場所によっては痛みを感じやすいかもしれません。鍼が⽑⽳に⼊ると、チクーっと鋭い痛みがあります。
道具(鍼)の進歩によって、刺す時の痛みは少なくなっています。
鍼が刺さった後の痛み
⾝体の中で鍼が⾻の表⾯や筋⾁を包む膜に当たった時、ズドーンとした鈍痛を感じることがあります。“鍼響”といって、効果を得るためには必要な刺激であると考えられています(諸説あります)。神経に鍼が当たった場合も同じような刺激感があったり、電撃様の痛みが生じたりすることもあります。効果を得るために必要なことがあります。
血管にあたると、チクーっと鋭くて継続的な痛みがあります。こちらの痛みは不要です。
鍼が刺さってしばらくしてから起こりうる痛み・不快な⽣理反応
筋⾁に鍼が⼊った状態で⾝体を動かすと、筋⾁の中で鍼が動いて痛みを感じます。
また、鍼治療に対する不安・緊張や鍼の痛みが引き⾦となって、気分が悪くなったり失神したりすることもあります。これは反射の⼀種で、⾎管迷⾛神経反射と呼ばれています。⾎管が広がったり⼼拍数が低下したりして種々の症状を引き起こします。採⾎していて気分が悪くなったり、⻑い間⽴っていたら倒れたりと、鍼以外の場⾯でも発⽣し得る現象です。血管迷走神経反射が起こった場合、速やかに鍼を抜いて横になることで不快感は治まっていきます。
鍼を抜く時
体表に⾒える⾎管は避けて鍼をしますが、体内で鍼が⾎管にあたってしまうと、出⾎あるいは内出⾎することがあります。消毒のためのアルコールが沁みて痛いこともあります。
施術後
鍼を刺していた部分に鈍痛が残ったり、少し⼒が⼊りにくくなったりすることがあります。1時間から数⽇で治まります。
全⾝の倦怠感を感じることがあります。
鍼の効果が弱い・感じられないことがあります。
症状が一時的に悪化することがあります。
鍼灸の限界
じねん堂で取り入れている董⽒楊⽒奇⽳は、日本では一般的ではありませんが、理論のシンプルさと効果発現の速さ・確実性により、中国・アメリカをはじめ、世界レベルでの広がりを⾒せています。様々な臨床研究により効果が確認されている現代的な鍼灸も、方法さえ知っていれば、どの鍼灸師でも同じ効果が出せる便利なものです。経絡治療にしても、日本で昭和時代に発案されたにもかかわらず、国内に複数の流派があり、アメリカやヨーロッパなどの海外へも展開しています。
これらの手法は、「効果があるから広がっていく」とも考えられ、実際、奇跡のようなエピソードを耳にすることもあります。とはいえ(繰り返しになりますが)、鍼灸はどのような疾患でもたちどころに治癒してしまう魔法ではありません。鍼の刺激によって⼈体の⽣理反応を引き出すという特性上、⼈体の基本構造や⽣理的原則を超越することは不可能なのです。
構造上の問題
筋⾁や腱が断裂し、完全に離れてしまったものを、鍼で元通りに治癒することは出来ません。⾻折も同様です。縫合・固定後の治癒促進や疼痛の緩和には役⽴つと思われます。
また、脳の損傷や障害を起因とする症状にも効果を期待できません。⽣理反応を起こす⼤元が壊れているからです。
重篤な疾患
代表的なものは癌です。鍼によってがんが縮⼩した報告を⽿にしますし、四半世紀も臨床に携われば、継続施術中にがんが縮小したり寛解したりといった経験もありますが、それでも、「効果があります!」と言えるものではありません。
放射線治療や薬物療法の際の副反応を緩和するために鍼を⾏うことはあります。とはいえこれも、余りに薬が強⼒な場合には鍼の効果を得られない可能性があります。
また、激烈な痛みや⻑期に亘る症状を⼀回の施術で取り去ることも難しいです。前述の構造的な要因や、内臓疾患があればなおさらです。施術頻度や回数を増やすことで、ある程度は対応できます。
遺伝⼦疾患
遺伝⼦異常によって引き起こされる疾患を治癒することは不可能です。
薬剤の影響
⾎流改善や鎮痛効果の速やかな発現を特徴としている鍼灸ですが、強⼒な、あるいは多種の薬剤を服⽤しているかたの場合、効果の発現が緩やかだったり、施術中に症状の変化を全く感じられなかったりします。(施術後しばらくしてから効果が発現することは、いくらか期待できます。)
施術間隔を狭めて対応するか、改善が期待できないとして治療をお断りすることになります。
⾼齢・衰弱
⾼齢や衰弱によって、⽣理反応⾃体が起こりにくくなっている可能性があります。効果の発現に時間がかかったり、症状の“戻り”が早かったり。寛解までに⻑期間を要したり。あるいは施術効果があらわれない可能性もあります。
物理的刺激要因
⽣活環境や仕事内容に特異的な刺激を起因とする症状は、「治すー壊す」のイタチごっことなる場合が多いです。患者の治癒⼒よりも故障を引き起こすストレスが勝る状態で、腱鞘炎などが代表的です。精神的ストレスによる症状も同じです。
一旦その場では痛みや症状が無くなっても、仕事や家事、運動などで動かしてしまうとぶり返すパターンです。可能であれば施術頻度を⾼くすることで対応します。
⼼理的要因
種々の⼼理的要因により、施術の影響を感じにくかったり、変化を認めることができなかったりすることがあります。施術者への不信感、鍼灸への恐怖、症状への固執、施術効果への過度な期待などです。施術者はなるべく⾔葉を尽くし、⼼理的因⼦の減少に努めてはいますが、ダメな時はダメです。お互いの⼼理的平寧のためにも遠慮せず仰ってください。施術はいつでも中断可能です。
以上、鍼灸による施術効果を魔法に例える患者が多いことも事実ですが、あくまで⼈体の法則から逸脱しない範囲でのパワフルさにとどまることをご承知おきください。
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