じねん堂における不妊鍼灸の施術成績

じねん堂が注力している不妊への鍼灸施術。その施術成績はどの程度なのでしょうか。
平成28年と29年に作成したデータをお示しします。

直近10例の妊娠率は80%

先ずはじねん堂における直近10例の施術成績をお示しします。(※平成29年6月現在、1生理周期以上継続治療のうえ終了し、結果を追跡できているもの)

ケース1 37歳 高度生殖医療の段階

  • 来院までの状態 
    体外受精1回。死産。卵巣嚢腫、卵管癒着。良い卵が取れにくかったとのこと。
  • 施術方針 
    経絡治療と低周波鍼通電、特殊鍼法、およびスーパーライザーによる自律神経調整と育卵治療。
  • 結果 
    妊娠成立(自然妊娠)
  • 施術期間 
    2か月(7回)
  • メモ 
    次の生理から病院での本格的な不妊治療を再開する予定というところでの自然妊娠でした。

ケース2 43歳 高度生殖医療の段階

  • 来院までの状態
    流産2回。人工授精2回。体外受精、分割胚移植2回
  • 施術方針
    経絡治療と低周波鍼通電、特殊鍼法、およびスーパーライザーによる自律神経調整と育卵・内膜の養生。
  • 結果
    妊娠成立
  • 施術期間
    6ヶ月(21回)
  • メモ
    通算3回目となる体外受精(凍結胚)にて妊娠成立しました。

ケース3 43歳 タイミング段階

  • 来院までの状態
    病院での不妊治療1年間。内膜が薄い。来院数か月前より排卵が“むずかしい”状態。
  • 施術方針
    経絡治療と低周波鍼通電、特殊鍼法、およびスーパーライザーによる自律神経調整と育卵・内膜の養生。
  • 結果
    妊娠不成立
  • 施術期間
    6ヶ月(31回)
  • メモ
    患者様の信条から、ステップアップはせず、期間を決めての施術でした。残念ながら力及ばず妊娠には至りませんでした。

ケース4 28歳 自己タイミングの段階

  • 来院までの状態
    1年間妊娠にチャレンジしたが成立せず、病院での不妊治療をはじめようと考えている。
  • 施術方針
    経絡治療による自律神経調整
  • 結果
    妊娠成立
  • 施術期間
    1ヶ月半(7回)
  • メモ
    病院でのガイダンスを受け、夫婦ともに各種検査を受けているところでの自然妊娠でした。

ケース5 34歳 タイミング段階

  • 来院までの状態
    1年間妊娠にチャレンジしたが成立せず、病院での不妊治療を開始したところ。器質上の問題は今のところない。
  • 施術方針
    経絡治療と低周波鍼通電、およびスーパーライザーによる自律神経調整と育卵・内膜の養生。
  • 結果
    妊娠成立
  • 施術期間
    12ヶ月
  • メモ
    ステップアップは望まず、長期間の施術を行った事例。病院でタイミング指導を受けながらも、仕事の都合等でなかなか合わせられなかったようです。転院し、初めてHCGを投与して妊娠に至りました。やはりタイミングに問題があったのかもしれません。施術期間を考えると、鍼灸が妊娠の成立にどれだけ寄与できたのか疑問が残ります。頭痛・肩こり・腰痛・倦怠感などの症状に対しては有効と思われました。実感できる変化があったからこそ、長期間通っていただけたのではないかと考えています。

ケース6 34歳 高度生殖医療の段階

  • 来院までの状態
    不妊治療2年間。人工授精2回。次は体外受精かというところ。
  • 施術方針 
    経絡治療による自律神経調整
  • 結果 
    妊娠成立(凍結胚移植)
  • 施術期間
    2か月半(8回)
  • メモ 
    本人の希望により、通電や特殊鍼法は行いませんでした。

ケース7 29歳 人工授精(AIH)の段階

  • 来院までの状態
    流産1回。人工受精3回。
  • 施術方針
    経絡治療と低周波鍼通電、およびスーパーライザーによる自律神経調整と育卵・内膜の養生。途中から特殊鍼法追加。内膜症の改善に方針を修正(ツボの選択を工夫)。
  • 結果
    妊娠成立(自然妊娠)
  • 施術期間
    3ヶ月半(18回)
  • メモ
    4回目の人工授精で妊娠不成立の後、転医して各種検査を行っている最中での自然妊娠でした。転医から初診までに2か月近くの期間があり、この間特殊鍼法を追加し、検査結果から施術方針も修正しました。

ケース8 31歳 高度生殖医療の段階

  • 来院までの状態
    1年間不妊治療。半年間タイミング療法ののち、体外受精。
  • 施術方針
    経絡治療と低周波鍼通電、およびスーパーライザーによる自律神経調整と育卵・内膜の養生。途中から特殊鍼法追加。
  • 結果
    妊娠成立
  • 施術期間
    10ヶ月(28回)
  • メモ
    器質的問題のため早期から体外受精となっていた事例。1回の移植延期と1回の失敗の後、さらに延期となった段階で特殊鍼法を追加し、2回目の移植で妊娠成立となりました。

ケース9 50歳 高度生殖医療の段階

  • 来院までの状態
    不妊治療3年。体外受精。凍結卵のストックが無いので、採卵するか卵子提供を受けるか検討中。
  • 施術方針
    経絡治療と低周波鍼通電、特殊鍼法、およびスーパーライザーによる自律神経調整と内膜の養生。
  • 結果
    妊娠成立(卵子提供を受けての体外受精)
  • 施術期間
    9ヶ月半(29回)
  • メモ
    移植延期等の理由による中断をはさんで9か月半の施術となりました。

ケース10 27歳 タイミング段階

  • 来院までの状態
    病院でのタイミング療法を1年前まで。現在は何もしていない。転院、ステップアップは検討中。
  • 施術方針
    経絡治療と低周波鍼通電、およびスーパーライザーによる自律神経調整と育卵・内膜の養生。
  • 結果
    妊娠不成立
  • 施術期間
    4か月(16回)
  • メモ
    施術期間を4か月と区切り、妊娠不成立ならば病院での不妊治療を再開するという申し合わせのもとでの治療でした。

 いかがだったでしょうか。お示しした事例だけをみれば妊娠率は80%に上ります。
 とはいえ、施術内容、施術頻度(施術期間と回数の関係にご注目ください)、年齢、器質的な問題の有無、夫婦関係・仕事などの環境要因が複雑に絡まり合っての結果ですので、参考までにとどめておいていただければ幸いです。
 また、このデータはあくまで “1生理周期以上” 施術を継続・終了し、“結果が追跡できている” という条件のもとでの数値です。集計に含めていない事例には、1生理周期以上施術を継続できずにドロップアウトしてしまったものや、1生理周期以上施術を継続した後にドロップアウトしたもの、終了したけれど結果を追跡できていないものがあります。
 仮に結果を追跡できていない事例を全て「妊娠不成立」とすれば妊娠率はいくらか低くなってしまいますが、施術終了後(あるいはドロップアウト後)、安定期に入ってからご連絡いただいたり、逆子で再来院されて妊娠を知ったり、小児はりを目的に来院されて出産に至ったことを知ったりといった経験も少なからずあります。ケース8は、そのような事例です。移植前日が最終の施術日で、安定期に入りしばらく経ってからご連絡いただきました。

次はもう少し条件を絞って、弊院における高度生殖医療の段階の方に対する鍼灸施術の成績をお示しします。

高度生殖医療の段階における妊娠率について

 平成28年6月現在、体外受精-胚移植(IVF-ET)や顕微授精(ICSI)など高度生殖医療の段階の方で、4か月以上施術を継続した直近7例、14移殖のうち、5例が妊娠に至っています。

 したがって、じねん堂における鍼灸施術による妊娠率は、1人あたり71%1移植あたり36%となります。

 不妊鍼灸ネットワーク(現JISRAM)方式の不妊鍼灸を取り入れて間もないころの統計ですので、症例数が少なく信頼性には疑問が残りますが、経絡治療のみで施術していた頃よりも成績が向上した印象です。

施術成績の考察

 冒頭にお示ししました通り、平成29年6月現在、弊院の直近10例の妊娠率は80%となっています(ケース5のことを考えると70%とした方が適当かも)。
 はたしてその妊娠率は高いのか、低いのか。これはなかなか難しい問題です。
 日本産科婦人科学会のように、毎年施設ごとの成績を細かに集計・解析している大規模なものであれば別ですが、一施術所の出してくる数字では、なかなか確からしさを担保するには至りません。施設によって患者の状態(段階)に偏りがあったり、それをきちんと分類して集計していなかったりしてしまうからです。
 一方、じねん堂が手本としている日本生殖鍼灸標準化機関(以下JISRAM)所属の京都の鍼灸院においては、4か月通院した患者全体における1人あたりの妊娠率が75%。おなじく手本としているJISRAM所属の愛知の鍼灸院では、総ET(胚移植)あたりの妊娠率が28.8%とのこと(平成28年3月)。
 所属している団体のトップランナーである治療院と条件を揃えて比較してみると、じねん堂の成績も悪くないのではと思われます。

 しかしここで注意したいのは、じねん堂がまだあまり有名でないこと。

 じねん堂の高度生殖医療の段階における妊娠率が愛知の鍼灸院よりも7%も高くなっていますが、これは、じねん堂の施術技術が特別優秀だというわけではなく、有名ではないので難治症例が押し寄せないからなのです。高度生殖医療の段階でも、ちょうどステップアップしたところとかステップアップ直前に弊院にかかり始めたとか、タイミング段階で掛り始めて最初の移植で妊娠出来たとか、比較的妊娠しやすい症例に恵まれていた可能性もあります(直近の10例を見ると、その傾向が窺えますね)。
 したがって、京都や愛知の鍼灸院よりも妊娠率がいくらか高くなっていて当然と考えられるのです。
 加えて、症例数が少ないことも高い妊娠率を示した理由のひとつです。じねん堂のベッド数や開院してからの期間を考えると、必然的に京都や愛知の鍼灸院よりも全体の症例数が少なくなります。今後、100例、1000例と症例を重ねていくうちに、妊娠率は低い方向へ変化する可能性があります。

 とはいえ、このまま黙って妊娠率が低下しているのを見ているわけではありません。
 提供する鍼灸治療の水準をより高いものとするべく、JISRAMでの学習はもちろんのこと、新たに有効であると考えられる手法があれば積極的に取り入れ、現在行っている手法にはさらに磨きをかける所存です。そして蛇足ながら、現段階でも実績ある有名治療院と同等の施術を受けることができると、宣伝しておきます。

愛知の鍼灸院の妊娠率について
 総ET(胚移植)あたりの妊娠率が28.8%いうと、日本産婦人科学会ARTデータブック(2012)にある数値と偶然にも一致しています。
 これは、「鍼をしてもしてもしなくても成績は変わらない」ということではありません。
 鍼灸には痛い・怖いというマイナスイメージがあり、受療に至るハードルがあります。鍼灸を利用すると決断した時点で、長く不妊治療を行っても結果が出ていないというエピソードをお持ちの場合も多いです。さらにこちらの治療院は不妊鍼灸を行う鍼灸院として有名でもありますので、症例数が極めて多く、難治症例の含まれる割合も一般的な施術所より高くなっていることが考えられます。
 医療行為による不妊治療や一般の施術所での施術で妊娠できなかった(つまり0%)患者が件の鍼灸院を頼った結果、その確率が28.8%にまで引き上げられたと考えるべきでしょう。

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