脚の付け根を専用のベルトを用いて締めたり緩めたりして、ベルトを巻いた部分より末梢へ血液を溜めたり開放したりすることにより、血流の改善を図るエクササイズがあります。いわゆる加圧や駆血療法と言われる手法です。
この方法によって、大腿動脈(ふとももの太い血管)のRI(レジスタンスインデックス:血管の抵抗=血液の流れにくさ)が低下することが分かっています。“流れにくさ”が低下するということは、流れやすくなるということです。
ここで血流が改善されている大腿動脈は、骨盤の中を通っている外腸骨動脈がふとももの部分まできて名を変えたものです。長野県を流れる千曲川が、県境を越えて新潟県に入ると信濃川と名を変えるように、動脈も同じ流れでありながら場所によって名称が変わります。 つまり、脚の付け根部分への操作で血流制限と再灌流を行った結果、大腿動脈のRIが低下して血流が改善することから、“県境”付近の外腸骨動脈の血流も改善していると推察できるということです。これは、加圧や駆血療法によって骨盤内の血流が改善することを意味します。
実際、これらの手法によって不妊・不育改善のためのセラピーを行っている施設も存在し、一定の効果を挙げているとアピールしています。しかしながら、この操作によって子宮動脈や卵巣動脈の血流が増加するという確固たる根拠(研究論文等)は無いようです。あくまで施術者(トレーナー)が個人的な主張をしているに過ぎません。※2016年8月現在
したがって、じねん堂では、この方法を積極的にはお勧めしていませんし、不妊に関する医学的な知識が十分であるとはとても思えないパーソナルトレーニングジムなどが、この種の手法を用いて不妊の改善を謳っていることに強い危機感を覚えています。
一方、一般的な運動については大抵の場合、積極的にお勧めしています。適度な運動は生活リズムにメリハリを生み、その結果、自律神経機能の正常化につながるとじねん堂では考えています。また、男性の場合、性ホルモンの分泌増進をねらってレジスタンストレーニングを行うことが推奨されます。
【参考】
相澤勝治. 性ホルモンと骨格筋. 体力科学. 2016, 65(5):455-462.