じねん堂は、「骨盤は滅多なことでは歪まない!」というスタンスで施術に臨んでいます。
そもそも骨盤の形には左右差があるので、触って「ああ。ズレてますね」と言えるものではありませんし、骨盤を構成するパーツも非常に強固に連結されているからです。
「骨盤が歪んでいるから左右の足の長さが違う」というのも、実際骨盤の形は何も変わっていなくて、単純に身体をねじってしまっているのでそう見えるだけなことがほとんどです。
骨盤の見た目の傾きが左右で違っているだけ。もしかしたら症状が出る前よりも傾きが大きくなっているかもしれないだけ。ですから施術としては、骨盤の見た目の傾きを修正するように周囲の筋肉を緩めたり、正した位置関係を維持できるような働きかけを行います。そうすることで実際に症状の寛解も実現することが多い印象です。
とはいえ、中には本当に骨盤が歪んでいる事例もあります。代表的なのが、俗にいう“出産後の骨盤のズレ”という状態。
今回は出産後の骨盤のズレに関して、いくつかお示しできればと思います。
カジュアルなズレ
さて、骨盤のズレとはいえ、本当に骨盤の骨どうしの連結がズレている数はそれほど多くありません。しつこいようですが、本当です。大抵はカジュアルなズレとでも呼べばよいのか、妊娠中にお腹が大きくなったり活動量が低下したりする事によっておこる筋肉の衰えを起因として、出産後も活動量が低いままだったり逆に早期から頑張って動きすぎたりした結果、
なんだか骨盤がズレているみたい……
といった感覚が続くというものが多いです。
ズレてないけどズレている気がする。骨盤の環状構造は正常で、外見上の傾きが変化している。つまり、身体を捻っている状態ですね。
この症状は2・3ヶ月で自然に治まっていくものですが、やはり症状が出ると不安になりますから、人によっては「産後の骨盤矯正」の看板を挙げている整体院などに “カモられ” て高額回数券を購入してしまうこともあるようです。
心身のストレスが加わったズレ
カジュアルなズレに、育児や仕事にまつわる心身のストレスが加わったりすると、少し症状の出方が複雑になってきます。簡単に申せば、治りにくくなってくるということ。自律神経症状が出てくることもあるでしょう。じねん堂が得意とする領域かも知れません。
過去に、整体院で「産後の骨盤矯正コース」に数十万円をつぎ込んでも改善せず、
精神的な問題ですね
と、放り出されてしまった事例を拝見したことがあります。
毎回、骨盤矯正の手技自体は数分で終わるものだったそうです。
じねん堂でなくても、ある程度時間をかけて対話を重視するような施術を行う施設に掛れば、件の整体よりはうんとマシな結果を得られたと思います。
骨盤の “つくり” の不安定さ
歪んでいるというか、骨盤のつくりが不安定になってしまう事もあります。骨盤がズレているみたいな感覚だけではなく、具体的な症状が出てきます。
腰痛、腰の下の方(仙腸関節)の痛み、股関節(足の付け根)の痛み、そして恥骨部分の痛みなどです。腰の下の方にあるお尻の筋肉の付け根あたり(仙腸関節)にゴリゴリしたものが触知できる事も多いです。
緊張があればそこを緩めるとともに、エクササイズをしたり固定をしたりすることで症状の寛解を目指します。安定性の獲得は矯正手技だけでどうこうできるものではありません。骨盤はレゴブロックのようにカチッとはめたら固定されるような仕組みではないのです。
保存的療法で寛解しない時は外科的療法も視野に入るようです。(じねん堂では経験がありません。ドロップアウト例ではあるかもしれません。)
ここまでは施術所でもある程度対応できる症状です。
ガチズレ
そして最後に紹介するのが、本当に骨盤がズレている状態。
実際に数が少ないのか、ほんとうは多いのだけれどもじねん堂の施術経験がないだけのかは分かりかねます。文献によれば8.7%に発生するという報告もあります。
症状はかなり強く、歩いたり、寝返りをうったりすることもままならない痛みが発生するようです。
発症直後の事例を我々が診る機会はないとは思いますし、私自身、初期段階で診過ごされたものにも遭遇したことがありません。診過ごされた場合、力を加えれば元に戻るのか、ズレたままで強固に固定されてしまうのか、また、固定されてしまうならどれくらいの期間で成されるものなのかも分かりかねます。もしかしたら「骨盤のつくりが不安定になってしまう」状態に準じた手法で症状を緩和できるかもしれませんが、今のところじねん堂では対応しておりません。
以上、産後の骨盤のズレについて紹介しました。
カジュアルなズレ程度の症状なら、整体の「産後の骨盤矯正コース」に数十万も払うより、パーソナルトレーニングでも受けた方がよっぽど健康的ですよ。
じねん堂は、「骨盤は滅多なことでは歪まない!」というスタンスで施術に臨んでいますが、だからといって、「骨盤が歪んでいる」と発言する施術者すべてを糾弾するつもりはありません。“見た目の傾きが左右で違っている” 状態を、患者に伝わりやすいように方便として “歪んでいる” と表現している者もいるからです。もちろん、解剖学的な知識のなさから本当に骨盤の骨同士の連結がズレている(つまり脱臼している)と考えていて、それを手技等で整復できる(さらに固定もしないのに整復した状態が維持される)と信じている者もいますが、少なくとも鍼灸あんまマッサージ師や柔道整復師などの国家資格保持者にはいないはずです。いたらごめんなさい。