更年期症状は、「エストロゲンが減るから起こる」と説明されることがよくあります。
たしかに、更年期から閉経にかけて、卵巣から分泌されるエストロゲンは大きく変化します。
だからといって、「エストロゲンを増やせばよい」と単純に考えるのは適切ではありません。
閉経前後には、ホルモンの変化だけでなく、体脂肪、筋肉量、血糖代謝、慢性炎症、自律神経なども、体調や将来的な健康リスクに関わってきます。特に体脂肪は、閉経後のエストロゲン環境とも関係します。
そのため、更年期世代では、エクオールなどのサプリメントを摂ることだけでなく、もう一段、積極的な対処が選択肢に入ってきます。
それは、適度な運動。
ここでいう運動は、体重を落とすことだけを目的にしたものではありません。筋肉量を保ち、体脂肪を増やしすぎず、血糖代謝や骨、自律神経の働きを整えるための体づくりです。
この記事では、更年期症状をエストロゲンの種類から見直したうえで、運動、鍼灸、ショウキT-1の位置づけについて考えます。
更年期をエストロゲンの種類から考える
実は、エストロゲンは1種類ではありません。
代表的なものに、E1、E2、E3があります。
E1・E2・E3とは何か
E1はエストロン。
脂肪組織等で作られるエストロゲンです。閉経前から存在しますが、閉経後は卵巣からのE2分泌が大きく低下するため、相対的にE1の割合が大きくなり、エストロゲンとしての存在意義が大きくなります。
E2はエストラジオール。
閉経前の女性で中心的役割を担うエストロゲンです。月経周期、排卵、子宮内膜、骨、血管、脳、自律神経、腟・尿路など、さまざまな組織に関係します。更年期症状との関係では、特にE2の変動と低下が重要になります。
E3はエストリオール。
主に妊娠中に多くなるエストロゲンです。更年期のほてり、発汗、睡眠障害、気分の変化などでは、E3の変動が中心的に扱われることはあまりありません。一方で、腟や尿路の乾燥感、違和感、性交痛、頻尿など、閉経後の腟・尿路症状では、局所的なエストロゲン療法の中でE3が使われることがあります。
以上のように、同じ「エストロゲン」という名前でまとめられてはいますが、E1・E2・E3は、それぞれの働き方も、目立つ時期も、臨床での意味も異なっているのです。
更年期ではE2が大きく変動し、やがて低下する
更年期症状を考えるうえで、まず重要視されるのがE2です。
閉経に向かう時期には、卵巣機能が低下し、E2の分泌は安定しなくなります。E2は一直線に下がるのではなく、大きく上下しながら、最終的に低い状態へ移行します。
そのため、更年期症状は「E2が低いから出る」というだけでは説明しきれません。E2が大きく変動する時期にも、ほてり、発汗、睡眠の乱れ、気分の不安定さなどが出やすくなります。
更年期はある日突然始まるものではなく、閉経前後にまたがる連続的な変化として理解されています。STRAW+10という国際的な分類でも、月経周期やFSHなどの変化をもとに、生殖年齢から閉経後までを段階的に捉えています。
もちろん、ほてり、発汗、睡眠の乱れ、動悸、疲労感、気分の変化、関節のこわばりなどが、すべてE2だけで説明できるわけではありません。甲状腺疾患、貧血、睡眠障害、うつ、不安、心疾患、薬剤の影響などが関わることもあります。症状が強い場合、不正出血がある場合、急に悪化した場合、強い動悸や息切れがある場合、気分の落ち込みが強い場合は、婦人科や内科の受診が必要です。
閉経後にE1の意味が相対的に大きくなる
閉経後は、卵巣からのE2分泌が大きく低下します。
では、エストロゲンが完全にゼロになるのかというと、そうではありません。閉経後も、体内では少量のエストロゲンが作られています。
その中心となるエストロゲンがE1です。
E1も加齢や閉経に伴って変化します。ただし、E2のように更年期移行期から閉経にかけて大きく下がるわけではなく、閉経後には脂肪組織などで作られるE1の存在が相対的に目立つようになります。
E1は、E2に比べると作用の弱いエストロゲンです。しかし、作用が弱いからといって、閉経後の体で無視できる存在とは言えません。
E1、脂肪組織、乳癌・子宮内膜癌リスク
乳癌や子宮内膜癌のリスクに関わるのは、E1だけではありません。E2を含め、体内で作られるエストロゲンへの曝露が高い状態は、乳腺や子宮内膜への刺激を強めます。
閉経後女性を対象とした研究でも、E1やE2などの血中濃度が高い群では、乳癌や子宮内膜癌のリスクが高いことが報告されています。
ただし、E1が何pg/mL以上ならリスクが高くなる、という明確な境界線が定まっているわけではありません。これまでの研究では、血中E1が高い群と低い群を比べる形でリスクが評価されています。
閉経後は卵巣からのE2分泌が大きく低下するため、脂肪組織で作られるE1の比重が相対的に高まります。だからといって、体脂肪を増やせばよいのかというと、そう単純な話ではありません。
体脂肪が増えすぎると、エストロゲン産生が増えるだけでなく、血糖代謝の悪化や慢性炎症も起こりやすくなります。こうした変化も、乳癌や子宮内膜癌を含む将来的な健康リスクに関わってくるのです。
したがって、更年期世代では、「エストロゲンを増やす」ことを目標にするのではなく、体脂肪を増やしすぎず、筋肉量を保ち、代謝の悪化を防ぐことが重要です。
そこで中心になるのが、適度な運動です。(2回目)
運動は更年期以降のホルモン環境に関わる
運動は、更年期症状を直接消す万能薬ではありません。
それでも、更年期以降の体づくりでは、運動を中心に置くべきだとじねん堂は考えています。
なぜなら運動には、体脂肪の増加を防ぐ、筋肉量を維持する、インスリン抵抗性を改善する、慢性炎症を抑える、睡眠や気分に良い影響を与える、骨量低下を防ぐ、といった様々な好ましい変化を期待できるからです。
また、更年期以降は、筋肉量が落ちやすく、体脂肪が増えやすくなります。体重がほとんど変わっていなくても、筋肉が減り、その分だけ脂肪が増えていることがあります。気づかないうちにこのような変化が進行するのを予防するためにも、運動は有用です。
さらに運動は、閉経後のエストロゲン環境にも関係します。
McTiernanらの12か月ランダム化試験では、閉経後女性に中等度運動を行わせたところ、血清エストロゲンが低下したと報告されています。特に体脂肪率が2%以上減少した女性では、対照群と比べて血清E1が11.9%、E2が13.7%、遊離E2が16.7%低下していました。
運動と癌リスクについても、多くの観察研究があります。米国国立がん研究所(NCI)は、身体活動量が高い女性では乳癌リスクが12〜21%低く、子宮内膜癌では身体活動量が高い女性で約20%低いとまとめています。身体活動が癌リスクに関わる機序として、性ホルモン、インスリン、炎症、免疫、肥満予防などが挙げられています。
ここで大事なのは、運動を「E1を下げるためだけの方法」と捉えないことです。更年期以降の健康を保つうえで、運動にはそれ以上の意味があります。
どのくらい運動すればよいのか
運動量の目安として、WHOは成人に対して、週150~300分の中強度有酸素活動、または週75~150分の高強度有酸素活動に加え、主要筋群を使う筋力トレーニングを週2日以上行うことを推奨しています。
とはいえ、更年期世代で運動を始める場合、いきなり高強度の運動を目指す必要はありません。
最初は、少し息が弾む程度のウォーキング、軽い筋力トレーニング、階段を使う、座りっぱなしの時間を減らす、といったところからで十分です。
大切なのは、続けられる形にすることです。
エクオールとホルモン補充療法
更年期症状に対して、エクオールを試すかたも少なくありません。
エクオールは、大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが、腸内細菌によって代謝されて作られる成分です。エストロゲンそのものではありませんが、エストロゲンが作用するときの受け皿となる「エストロゲン受容体」に結合し、エストロゲンに似た働き(エストロゲン様作用)を示します。ただし、その作用はE2より弱いとされています。
日本人の閉経後女性を対象とした研究では、S-エクオールを1日10mg、12週間摂取した群で、ほてりなどの更年期症状が改善したと報告されています。一方、2023年の北米閉経学会(NAMS、現・The Menopause Society)による「非ホルモン療法に関する声明」では、ほてりや寝汗などの血管運動症状に対して、大豆食品、大豆抽出物、エクオールは推奨されていません。現状、エクオールの研究結果は一貫していないようです。
更年期症状が強い場合には、ホルモン補充療法(HRT)が治療の選択肢になります。北米閉経学会の2022年声明では、HRTはほてりや寝汗などの血管運動症状に最も有効な治療とされています。また、閉経後にみられる腟の乾燥、性交痛、頻尿などの閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)や、骨量減少、骨折の予防にも有効です。
HRTの適否は、年齢、閉経からの期間、子宮の有無、乳癌・子宮内膜癌・血栓症・心血管疾患などの既往、使用する薬剤や投与方法を踏まえて、婦人科で判断されることとなります。
じねん堂が提案できること
更年期世代に対して、じねん堂がまず提案するのは、適度な運動です。(3回目)
じねん堂では、年齢や体力だけでなく、痛み、睡眠、疲労感、現在の生活習慣も踏まえ、無理なく続けられる運動内容を提案しています。体重を減らすことだけではなく、筋肉量を保ち、体脂肪の増加や代謝の悪化を防ぐことを最終的な目的とします。
鍼灸は、自律神経や血流、筋肉のこりや痛みなどに働きかけることで、体を動かしやすくし、運動の継続や生活習慣の改善を後押しする役割に位置づけています。
そして、たんぽぽ茶 ショウキT-1。こちらに関しては、エストロゲン受容体などの発現が増加したとするマウス研究があります。しかし、ヒトの更年期女性を対象とする「症状の改善」や「エストロゲン値の変化」を示す大規模な研究が存在しません(症状改善の単例報告はある)。そのため、じねん堂では、期限を決めて試す補助的な選択肢として、たんぽぽ茶 ショウキT-1を提案しています。
まとめ
更年期では、E2が大きく変動しながら低下し、閉経後には脂肪組織で作られるE1の比重が相対的に高まります。また、E1を含む内因性エストロゲンへの曝露が高い状態は、閉経後に限らず、乳癌や子宮内膜癌のリスクと関係します。
更年期世代では「エストロゲンを増やす」ことを目標にするのではなく、筋肉量を保ち、体脂肪や代謝を適切に管理することが重要です。その中心になるのが、適度な運動です。
じねん堂では、運動を主軸に、鍼灸によって体の動かしやすさや生活習慣の改善を支えます。また、たんぽぽ茶 ショウキT-1は、エストロゲン受容体などの発現増加を報告したマウス研究を背景に、補助的な選択肢としてご案内しています。
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