じねん堂はり灸治療院は完全予約制です。看板も出さずに営業しています。
洒落た雰囲気を醸し出したり、特別感を出したりしたいからではありません。もっと現実的な理由からです。
それは無用なトラブルを避けるため。
じねん堂は鬆下手の業務を一人で行っています。そして、往療(出張・訪問鍼灸)に出ていることがたびたびあります。もし看板を掲げていて、それを見て来院されたかたがあっても、対応できるとは限らないのです。また、じねん堂の建物は住居兼施術所で、世帯主であり院長である私には小学生と年中の子供がいますので、防犯上の理由もあるのです。
以前こんなことがありました。
ある日の午後、施術をしていると、玄関を開けて誰かが入ってくる音が聞こえました。手を止めて、ホールの方をうかがうと、男性が靴を脱ごうとしているところでした。次の予約までは時間がありますし、そもそもその男性に見覚えがありません。
「どなたですか?」
「ここって、ハリ屋やろ?」
「はい。どういったご用件でしょうか」
「ちょっとやってほしいんや」
「予約制で、この後も予約が入っていますので、今日は対応できかねます。予約をお取りしましょうか?」
「今できやんのか」
「あいにくと予約が詰まっていまして……」
「この前来たら閉まっとるし、電話してもでやんだで来ったんやぞ!」
今にもつかみかかってきそうな勢いには震え上がりながらも、何とか収めてお帰り頂きました。
もしこのようなかたが私の留守中に来院し、間違って子供が対応してしまったら……。子供に怖い思いをさせてしまいそうですし、さらに横着い人だったら、“足代”をレジから持って行ってしまうかもしれません。
このかたは誰かからじねん堂の存在を聞いて、探して来られたわけですが、「完全予約制」だったことで、子供を巻き込むような最悪の結末とはならずに済んだと理解しています。因みに、電話をしてこられたという日は日曜(休業日)で、留守電へのメッセージもありませんでした。
私が休業日に電話に出ることは滅多にありません。留守電にメッセージが入っていたら折り返すようにはしていますが、それも営業日になってからです。自宅兼施術所だからといって、24時間365日拘束される謂われはないと考えているからです。休業日は休みます。
何卒ご理解のほど、お願い申し上げます。