不育症は、妊娠を希望する多くの夫婦にとって深刻な課題です。近年は診断や治療の体系が整いつつありますが、依然として「なぜ起こるのか」「どのように向き合うべきか」について不明な点が少なくありません。
2025年に公表された「不育症管理に関する提言」では、従来の常識と異なる新しい知見が数多く示されています。今回は、その中から特に注目すべき5つの意外な事実をお伝えします。
1. 不育症は「2回以上の流産・死産」で定義される
従来、不育症は「3回以上の連続する流産」と理解されることが多くありました。しかし最新の提言では、「流産あるいは死産が2回以上ある状態」と定義されています。ここで重要なのは、連続している必要はないという点です。一度出産を経てから2回流産した場合も不育症に含まれます。なお、妊娠検査薬で陽性が出ても超音波検査で胎嚢が確認される前に終わってしまう「生化学的妊娠」は、この定義には含まれません。ただし提言では、臨床的な流産とは区別して記録を残すことが推奨されています。
日本の大規模調査では、妊娠経験のある女性の約4.96%が2回以上、約1.13%が3回以上の流産や死産を経験していることが示されています。推計すると日本国内で35万~50万人が不育症に該当すると考えられており、決して稀な疾患ではないことがわかります。
2. 最も多いのは「原因不明」
不育症の評価では、子宮の形態異常、甲状腺機能異常、血液凝固異常(抗リン脂質抗体症候群など)が検討されます。しかし、これらの検査をすべて行っても65.1%が「原因不明」と分類されます。
原因が明らかにならない背景として、偶発的な胎児染色体異常が大きな要因と考えられています。これは特定の体質や生活習慣によるものではなく、多くの場合、偶然の積み重ねによって生じます。この知見は、患者や家族が「自分のせいではない」という理解を持つ上で非常に重要です。
3. 男性因子の影響
不育症の議論は女性側に偏りがちですが、提言では男性側の要因にも言及されています。
- 年齢:
男性の年齢が上がるほど流産リスクが増加します。25〜29歳と比べると、40〜44歳で23%、45歳以上で43%高いと報告されています。 - 精子DNA断片化指数(sDFI):
精子中のDNA損傷を評価する検査で、値が高いほど初期流産と関連する可能性が指摘されています。ただし、提言では「研究的検査」と位置づけられており、臨床応用はまだ途上です。 - 生活習慣:
喫煙、肥満、過度の飲酒は精子の質に悪影響を与えることが知られています。男性側の健康管理も、不育症の背景因子として軽視できません。
このように、不育症は夫婦で取り組むべき課題として理解する必要があります。
4. 支持的ケア(TLC)の有効性
医学的治療だけでなく、心理社会的支援の重要性も示されています。
支持的ケア(Tender Loving Care: TLC)とは、医療者が妊娠初期の女性に対して親身に対応し、頻回の診察や超音波検査を通じて安心感を提供する方法で、研究によると、原因不明の習慣流産患者にTLCを行った場合、妊娠継続率は86.5%に達しました。これは、通常の健診のみを行った群(33.3%)と比べて明らかに高い数値です。
この効果の背景は完全に解明されてはいませんが、不安やストレスの軽減が妊娠経過に良好な影響を与えることは十分に考えられます。科学的治療と心の支援は、両輪として機能することが改めて示された事例です。
5. 新たなリスク因子「ネオセルフ抗体」
提言では、近年発見されたネオセルフ抗体に関する記載が盛り込まれています。この抗体は不育症女性の22.9%、原因不明とされた例の19.8%から検出されました。
さらに2025年4月からは、この検査が「先進医療A」として承認されました。陽性患者に対しては低用量アスピリンなどの治療が有効となる可能性も報告されています。これにより「原因不明」とされてきた症例の一部が新たに説明可能となり、不育症研究の大きな進展を意味します。
まとめ
「不育症管理に関する提言2025」を読み解くと、医学的に確立された事項だけでなく、一般にはあまり知られていない事実が浮かび上がってきます。
不育症は「2回以上の流産・死産」で診断され、決して稀ではないこと。原因を詳しく調べても、多くは「不明」に分類されるという現実。女性だけではなく男性の年齢や生活習慣が妊娠経過に影響し得ること。さらに、薬や手術といった医学的治療だけでなく、医療者からの心理的サポートが妊娠継続に大きく寄与する可能性があること。そして、新たなリスク因子として「ネオセルフ抗体」が見出され、これまで説明できなかった症例の一部に光が当たり始めていること。
これらの事実は、単に数字や研究成果としてではなく、不育症と向き合う夫婦が「自分のせいではない」「一人で抱える問題ではない」と理解するための手がかりになります。
科学はまだ途上にありますが、確実に前進しています。今後さらに治療や支援の選択肢は広がっていくことが期待されます。
【参考文献】
不育症管理に関する提言改訂委員会. 不育症管理に関する提言2025. 2025 May 13.

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