昨今、骨盤矯正で不妊を治すという整体院が散見されるようになりました。「不妊の原因は骨盤の歪み」なのだとか。
果たして本当でしょうか。
じねん堂でも補助的に施術の中で整体をおこなうことはありますが、骨盤の歪みと不妊症の関係については、その原因を骨盤に求めることができずにいます。とはいえ、不妊症に対する整体の効果はと聞かれれば、「期待できる」と答えます。
なぜなら、整体による施術の影響が筋肉と自律神経にあらわれるから。
精神的な要因や日常生活・職務上の要因などから不良姿勢が継続されることで、不自然な部分の筋肉が持続的に伸長あるいは短縮、緊張し、自律神経系の働きを乱すというのはよく知られていることです。
自律神経失調症状に対する整体の考え方については、
鍼灸は心身の調子を整えるのに有益です。血流を改善したり筋緊張を緩和する力も強いと言えます。しかし、鍼灸だけでは日常生活で長年癖付けされた姿勢や筋・骨格の見た目上のねじれ・歪みなどを正すことが難しいのもまた事実。
自律神経症状
自律神経失調症というと原因不明の体調不良というイメージが強いかもしれませんが、人体の構造上の不均整(姿勢の乱れ)も、自律神経系の乱れを惹起する一因と考えられます。例えば、パソコン作業やスマホ操作などによって、いわゆる猫背・巻き肩で首を前に出したような姿勢が持続すると、副交感神経の活動が抑制されて交感神経が優位になることが分かっています。椅子に浅く腰掛けて背もたれにもたれ掛かるような座り方も同様です。また、猫背・巻き肩で縮こまった姿勢は、呼吸を浅くし、種々の不調を長引かせてしいます。呼吸に伴う胸の動きを手技療法やホームケアで改善したところ、パニック症状が治まった事例もあります。
したがって、不良姿勢に代表される筋・骨格の不均等はなるべく早く解消した方が良いのです。それには、筋肉を緩めるのはもちろんのこと、身体各部位の位置や筋肉の使い方を身体に再学習させることが重要になってきます。習慣化してしまった不良姿勢の矯正、好ましい姿勢の再学習には、手技療法(整体・機能訓練)やエクササイズが最適です。
と、別のエントリーでも記載しています。
これと同じことが、不妊への整体に関しても言えるのです。
不妊整体と呼ばれる手法では、骨盤周囲の筋肉を中心に徒手的な働きかけを行い、骨盤内臓(子宮や卵巣)の血流改善を図ったり、自律神経機能を整えたりします。骨盤自体に構造的な変形(ゆがみ)が生じて不妊に陥っているわけではなく、骨盤内を通過する筋肉の過緊張によって子宮や卵巣の血流が阻害されたり、骨盤周囲の筋肉の不均等な緊張によって身体に対する骨盤の相対的な位置が変化し(歪み・捻じれ)、これにともなう不良姿勢の継続から自律神経機能が失調したりすることによって不妊を招いてしまうという考えからです。
逆に申せば、自律神経機能の失調状態にあっても骨盤の見た目の傾きにそれほど変化がない場合にはあまり効果を期待できません。局所(子宮・卵巣周囲)の血流改善という観点からも同様です。これは巷の不妊整体全般にも当てはまることです。
じねん堂は、「骨盤(の構造)は簡単には歪まないし、仮に歪んでいたとしても整体院で行う骨盤矯正程度では矯正した状態を保てない」という立場ですが、骨盤の歪み(見た目の傾き・筋肉の不均整)を矯正することで不妊の改善を期待できるとは考えています。
とはいえ、じねん堂はあくまで鍼灸院です。必要と判断した場合には徒手療法も行いますが、基本的に施術は鍼灸が中心となりますので、徒手療法のみを用いての施術(いわゆる不妊整体)は致しかねます。