お子さんの心と体を整える チック症・トゥレット症候群包括的ガイド

 チック症は、突発的・急速・反復性・非律動性の運動や発声として現れる神経発達症群の一つです。
 その病態はまだ完全には解明されていませんが、適切な介入によって、日常生活に支障のない状態にまで改善することが多いとされています。
 治療は、軽度であれば心理教育や環境調整、行動療法が中心となり、重症の場合には薬物療法が検討されますが、最も重要なのは、家族や周囲がチック症の特徴を正しく理解し、本人に合った関わり方を取ることです。
 本記事は、チック症患者のご家族が、チック症の特徴や治療・支援の考え方を整理し、理解と適切な対応の一助となることを目的としています。

目次

チック症とは?症状の基本と現れる年齢の特徴

 定義・分類・起こりやすい年齢と自然経過をお示しします。

チックの分類

 チックは顔や手足が動く「運動チック」と、発声や言語の特徴による「音声チック」とに大別されます。また、症状の持続時間や複雑さによって「単純性チック」と「複雑性チック」とに分類されます。

  • 単純性チック:
    まばたき、目を動かす、鼻をぴくぴくさせる、首を振るなどの単純運動チックや、咳払い、鼻鳴らし、「ンンン」など声を出す単純音声チックが一般的です。これらは急速で短時間の動きや音です。
  • 複雑性チック:
    持続がやや長く、一見意味があるように見える動きや発声です。複雑運動チックには、スキップ、飛び跳ねる、叩く、臭いを嗅ぐといった日常の動作に近い動きが見られます。複雑音声チックには、不適切な言葉や性的な言葉を繰り返す汚言症(コプロラリア)が含まれます。

 症状は波のように増減し、部位や型が入れ替わる「ワックス&ウェイン(増悪・寛解の反復)」が特徴で、臨床ではこの可変性を前提に対応します。学校や家庭で目立ち方が異なることも多く、指摘や注目が逆に症状を強めることがあるため、配慮が必要と言われています。

発症の背景:脳・神経の発達と心身の状態

 チック症は、米国精神医学会の診断基準(DSM-5)において神経発達症群の一つとして位置づけられています。病因としては、脳内のドパミン系の過活動を中心とする神経伝達物質の不均衡 や、大脳皮質-大脳基底核-視床-大脳皮質という神経回路の機能障害が想定されています。
 心理社会的ストレスや脳の興奮状態(緊張とリラックスのバランス)の変化は、症状の増悪や寛解に影響し、病像は「神経発達の基盤 × 環境(ストレス・注目・睡眠)」の相互作用として捉えられます。臨床では、神経学的基盤の説明に加えて、家族へ「わざとではない」ことと環境調整の意義とを早期に伝えることが重要とされています。

ドパミン系:
ドパミンは、脳内で「動きを起こす」「やる気を出す」「快・不快を判断する」といった働きを担う神経伝達物質です。このドパミンを介して情報を伝える神経の経路をドパミン系と呼び、運動の制御や注意の切り替え、感情の調整などに関わっているとされています。

大脳皮質-大脳基底核-視床-大脳皮質回路:
脳の中で「動作を計画し、実際に実行する」ための神経ネットワークです。大脳皮質が動きを指令し、大脳基底核が不要な動きを抑え、視床がバランスを整える──この一連のループによって、私たちは滑らかに体を動かすことができます。

年齢による症状の変化と経過

 発症はおおむね4〜8歳で、10〜12歳頃に重症化のピークを迎えやすく、その後は思春期後半〜成人早期にかけて軽快へ向かう例が多数です。日本の臨床報告やレビューでも、約2/3以上が成人初期までに支障の少ないレベルへ落ち着く傾向があるとされています。

チック症を誘発する「ムズムズ」と悪化要因

 チックは単なる“癖”ではなく、体が動きたくなるような強い衝動に突き動かされて起こります。この章では、なぜチックが止めにくいのか、そしてどんな要因で悪化しやすいのかを見ていきます。

チックの直前に感じる前駆衝動(Urge)とは?──なぜ「止めにくい」のか

 チックが起こる直前、多くの患者は「ムズムズする」「引っ張られるような感じがする」「何かが溜まっているようで出したくなる」といった前駆衝動を感じています。
 この前駆衝動は、脳の運動を制御する神経回路が過剰に興奮して生じるもので、体が自動的に“動きたくなる”反射的な仕組みが関わっています。そのため、本人が「止めよう」と意識しても、衝動そのものは簡単には消えず、むしろ緊張や意識の高まりで余計に強く感じることがあります。

 さらに、チックを出すとその不快感が一時的に解消され、「すっきりする」「ちょうどいい感じになる」という感覚が生じます。この「不快感の解消=報酬」のループが脳に学習されることで、チックは“やめたいのに出てしまう”行動として固定化されやすくなるのです。
 つまり、チックが止めにくいのは「我慢が足りない」からではなく、神経の働きと学習の仕組みがそうさせているのです。

 行動療法(HRT/CBIT)は、この前駆衝動への気づき(アウェアネス)と、チックの代わりに体を落ち着ける別の動きを身につけることで、「衝動→チック」の流れを少しずつ弱めていく方法です。
 例えば、まばたきのチックが出そうなときは目を大きく開けて静止する、首を振るチックには首の筋肉を軽く緊張させて固定する、咳払いのチックには口を閉じて鼻からゆっくり呼吸するといった具合に、チックと同時にはできない動きを練習します。こうして「衝動をやり過ごす力」を育て、脳に「チックを出さなくても不快感は自然に消える」という新しいパターンを学習させることが、この療法の核心です。
 海外ガイドラインではCBITが治療の第一選択として推奨され、大規模ランダム化比較試験でも薬物療法に匹敵する改善効果が確認されています。

悪化要因(ストレス、疲労、生活習慣)への対処──なぜ叱ると悪化するのか

 チック症は、心と体の状態に大きく影響されます。とくにストレス・疲労・睡眠不足・環境刺激の過多は、症状を悪化させる主要因として知られています。これは、緊張や不安が高まるとストレス応答系(HPA軸)が活性化し、ドパミン神経系の働きが強まることで、前駆衝動がより感じやすくなるためです。
 たとえば、学校で注意されたり、家で「やめなさい」と叱られたりすると、一時的に止まるように見えても、その後にかえってチックが強くなることがあります。叱られることで本人が「また出たらどうしよう」と緊張し、脳が興奮しやすくなるためです。
 チックは“注意や叱責に敏感に反応する”という特徴を持つため、叱ること自体が症状を強める刺激になってしまうのです。
 また、睡眠不足や生活リズムの乱れは自律神経のバランスを崩し、チックを誘発しやすくします。テレビ・ゲーム・スマートフォンの長時間使用なども脳の興奮状態を高めるため、時間を決めて休息を挟むことが大切です。逆に、規則正しい生活と安心できる環境が整うと、症状が自然に落ち着く例も少なくありません。

 臨床では、保護者が「チックはわざとではない」「育て方のせいではない」と理解し、叱責や注意を避けて安心感を与えることが、最初の治療として極めて重要です。
 星野(2021)は、「チックは“治す”よりもまず“安心できる場”をつくることで軽くなる」と述べており、新井(2018)も「叱らず見守るだけで改善した例」を報告しています。

 こうした心理的な安定が、行動療法や鍼灸など他の治療効果を高める土台になると考えられています。

トゥレット症候群と併存症の理解

 チック症やトゥレット症候群(TS)は、単にチックの強さだけでなく、同時にみられる他の発達・情動面の特徴(併存症)を理解することが大切です。
 注意欠如・多動症(ADHD)や強迫性障害(OCD)、そして爆発的な反応(explosive outbursts:臨床的に rage attacks と呼ばれることがあります)などが併存することも多く、これらが本人や家族の生活の質(QOL)、学校・家庭での困りごとに大きく影響します。
 この章では、診断基準、併存症の特徴、そしてQOLを踏まえた治療開始の目安を解説します。

診断の基準と、合併しやすい他の精神神経疾患

 チック症の診断は、運動チックまたは音声チックのいずれか、あるいは両方が1年以上持続することを基本とし、年齢や症状の経過、他の疾患との鑑別を含めて行われます。そのなかでも、複数の運動チックと1つ以上の音声チックが持続している場合を、トゥレット症候群(TS)と呼びます。診断では、症状の出方だけでなく、発症年齢・経過・他疾患との鑑別を慎重に検討します。

ADHD(注意欠如・多動症)

 TSの患者の半数以上にみられる併存症で、臨床紹介例では60〜80%に及ぶこともあります。
 臨床報告では、ADHD症状がチックより先行して認められることが少なくありません。 落ち着きにくさ、集中困難、衝動性が特徴で、学校で注意を受けやすく、結果的にチックへの注目が増えるという悪循環を招くことがあります。
 ADHDは「行動を抑える力」や「気持ちを切り替える力」に関わる脳の機能調整の問題とされています。子ども自身の努力不足ではなく、脳の発達の特徴によるものであることを理解することが支援の第一歩です。

OCD(強迫症・強迫性障害)

 生涯のうちに3分の1〜半数のTS患者が経験します。
 OCDでは、「しっくりくるまで同じ動作を繰り返す」「対称性を整えないと落ち着かない」といった強迫的な感覚が見られ、チックと見分けがつきにくい場合があります。特に「just-right感覚(ぴったり感)」はTSとOCDの両方に共通し、行動が“意図せず繰り返される”という点で混同されやすい特徴です。OCDとチックが併存する場合、「気持ち悪いから動く」といった感覚的要素が強くなり、「止めたい気持ち」と「止められない衝動」が同時に存在して葛藤を生じやすくなります。
 金生(2022)は、こうした併存症を十分に考慮しないままチックだけに焦点を当てると、「治療の方向性がずれやすい」と指摘しています。

攻撃性・怒りのコントロールの問題(Explosive Outbursts / Rage Attacks)

 トゥレット症候群では、感情のコントロールが難しい**爆発的な反応(explosive outbursts)**や衝動的な攻撃行動がみられることがあります(臨床的には rage attacks と呼ばれることがあります)。小さなきっかけで突発的に怒りが爆発する反応で、本人にも「なぜ怒ってしまうのかわからない」という自覚があります。これらは「わがまま」「反抗的」と誤解されがちですが、背景には衝動制御機能の障害や情動調節の困難が存在します。

  • 発生頻度:
    報告により幅はあるものの、攻撃的/爆発的行動が相当数(約25〜50%)にみられるとされています(Robertson 2008)。これらはコプロラリア(不適切発話)や自傷行為と同じく、「社会的に不適切な行動因子」として解析されました。また、Hassan(2012)は、攻撃性や行動問題が家庭・学校での不適応に関連することを示しています。
  • 併存との関連:
    ADHDや不安障害の併存は、攻撃性や情動の爆発と関連しやすいとされています。国内の専門家報告(浜本 2019)でも、「環境調整」「予防的な声かけ」「過剰な叱責の回避」が基本方針とされ、情動を抑えるよりも早期の察知とクールダウンが有効と述べられています。
  • 治療的対応:
    一般集団で用いられるペアレント・マネジメント・トレーニングや怒りのマネジメントトレーニングがTS児にも有効と報告されています。専門家コンセンサスでは、攻撃的行動の強い症例に対し、リスペリドンやアリピプラゾールを第一選択薬として推奨する所見も示されています。

QOL(生活の質)評価の重要性

 チック症の治療では、症状の強さだけでなく、生活への影響を正確に把握することが重要です。医療現場ではYGTSS(Yale Global Tic Severity Scale)が重症度評価に用いられますが、点数が軽度でも本人や家族が強い困難を感じる場合があります。このため、最近ではQOL評価を併用することが推奨されています。

  • PTQ(保護者向けチック質問票):
    チックが学校や家庭にどんな影響を与えているかを、保護者の目線で評価する質問票。
  • GTS-QOL(トゥレット症候群特異的QOL尺度):
    本人が「授業中に集中しづらい」「人目が気になる」など、生活上の困りごとを自己評価する尺度。

 これらの評価を組み合わせることで、「医師が見る症状の重さ」と「本人・家族が感じるつらさ」の両方を把握できます。そのうえで、治療を開始するタイミングを現実的に判断することが可能になります。
 日本のレビューでは、CBIT(包括的行動介入療法)が国際的に第一選択とされ、ランダム化比較試験でも薬物療法に匹敵する効果が確認されています。ただし、日本では専門家不足や通院距離などの課題があり、オンライン形式や家庭での支援が今後の課題とされています。


 トゥレット症候群の理解には、「チックそのもの」だけでなく、「併存症との関係」「生活への影響」「感情の調整」という3つの視点が欠かせません。治療や支援は、医療的介入だけでなく、家族・学校・地域が協力して安心して生活できる環境を整えることから始まります。

医療機関での専門治療と相談の目安

 チック症の治療は、まず医療機関での評価から始まります。この章では、主に病院で行われる薬物療法や、併存症への対応、学校との連携について紹介します。

薬物療法の選択肢と注意点──いつ、何から始めるか

 チック症が日常生活に強く影響し、本人や家族の負担が大きい場合、薬物療法が検討されます。
 日本の専門家コンセンサスでは、第一選択はアリピプラゾール(90.9%)で、開始は1.5〜3mg/日から。次にリスペリドン(0.5mg/日〜)がよく用いられます。
 
小児では少量から慎重に増量し、副作用(眠気・体重増加・錐体外路症状など)をモニターしながら環境調整と併用されます。
 とはいえ、薬はあくまで症状を一時的に和らげる補助的な手段です。チックには自然な波があるため、漫然と続けるよりも、状態に応じて「減量・中止」も含めた計画的な運用が重要とされています。

ADHD併存や学校連携のポイント──なぜ連携が効くのか

 チック症では、ADHD(注意欠如・多動症)や不安症などを併せ持つことが少なくありません。これらが重なると、注意の切り替えや衝動の抑制が難しくなり、結果としてチックが悪化しやすくなります。
 こうした場合には、医療機関や専門の支援員(社会福祉士・精神保健福祉士)が中心となって、家庭や学校と連携しながら支援を進めることが一般的です。薬物療法が検討される際には、α2A作動薬(グアンファシンなど)はADHD症状の改善を主目的に用いられ、一部でチックの軽減がみられることもあります。症状の強さだけでなく、「日常生活のどの場面で困っているか」を基準に、行動療法や環境調整を組み合わせていくことが重要です。

 学校側は、症状を抑え込むよりも、子どもが落ち着いて過ごせる環境を整えることを重視します。
 チックは「本人の意思とは無関係に出る現象」であり、叱責や我慢の強要はかえって症状を悪化させることがあります。授業中にチックが強まる場合には、保健室や別室で一時的に休めるようにする、発表の機会で過度な注目が集まらないようにするなど、学校生活の中で小さな調整を重ねることが大切です。

 医療・教育・家庭、それぞれの立場が情報を共有しながら役割を分担することで、支援はより安定します。保護者が一人で抱え込まず、学校や医療機関、行政の相談窓口と協力して子どもの生活を支える体制を作ることが、長期的に落ち着いて過ごすための第一歩になります。

鍼灸院でできる支援──安心を支えるもう一つの方法

 医療機関の治療と並行して、鍼灸院では心と体を整えるサポートを行うことができます。ここでは、鍼灸による補完的な支援の考え方について解説します。

鍼灸による身体的サポート──心身を整えるもう一つの支援

 チック症に対する鍼灸治療は、国内外で徐々に研究が進みつつあり、運動チックや音声チックの軽減に有効であったとする報告も見られます。中国の臨床研究では、主に頭皮鍼を中心とした手法により、鍼灸単独あるいは薬物療法との併用でYGTSS(チック重症度スコア)の改善が報告されています。とはいえ、現時点ではエビデンスの確立段階にあり、「根治療法」というよりも、身体と心の安定を助ける支援として位置づけるのが妥当です。

 刺激への感受性は子どもによって大きく異なります。当院では、必要に応じて頭皮への鍼を用いることもありますが、刺激が強すぎると判断した場合には、スーパーライザー(近赤外線照射器)を用いた疑似レーザー鍼療法に切り替えています。これは皮膚を傷つけずに、星状神経節や後頭部・頭皮の反応点に光を照射して神経活動を穏やかに調整する方法であり、鍼刺激が苦手なお子さんでも安心して受けることができます。

 鍼灸治療の目的は、チックそのものを直接止めることではなく、自律神経の緊張を緩め、睡眠や消化機能を整え、ストレスによる過敏性を下げることにあります。体の状態が安定すると、衝動の高まりやイライラなどの症状が和らぎ、行動療法や学校での支援がより効果的に進むことも多く見られます。

 「体を整え、心を落ち着ける」ことは、どの支援にも共通する基盤です。
 鍼灸は、その基盤を支える一つの方法として、子どもの回復を長期的に支援する役割を担い得ると言えます。

鍼灸院の役割──医療・教育・家庭をつなぐ“支え手”として

 チック症の中心的な治療はあくまで医療機関によるものであり、鍼灸院はそれを補完する立場にあります。私たち鍼灸師は治療の主軸を担うわけではありませんが、お子さんとご家族が安心して支援を受け続けられるように、背中をそっと支える存在でありたいと考えています。
 たとえば、学校や病院での対応に疲れてしまったとき、鍼灸の施術(あるいは鍼灸院という空間)が「落ち着ける時間」や「安心できる場所」となることがあります。体の緊張をゆるめ、呼吸を整えることで、自律神経のバランスが安定し、日々のストレス反応を和らげることができます。こうした身体のリラックスが、行動療法や薬物治療など、他の支援の効果を高める土台となります。
 また、保護者の方の不安や迷いに耳を傾け、必要に応じて医療機関や行政の相談窓口を案内することも、鍼灸院の大切な役割です。
 直接「診断」や「治療方針の決定」を行うことはできませんが、「今できること」から支える小さな支援の積み重ねが、家族全体の安心と前向きな日常につながります。

まとめ:お子様の成長を見守るためのアドバイス

 チック症は成長とともに変化していく経過をたどります。
 最後に、家庭での向き合い方や、長期的に支えるうえで大切な視点を整理してお伝えします。

短期:今日からできること

 チックは、種類や部位、頻度が日によって変化しやすく、短期間で増えたり減ったりすることがあります。一時的な悪化に過度に反応する必要はありません。
 保護者ができることは、叱らずに受け止めること、十分な睡眠を確保すること、生活リズムを整えることの三つが基本です。また、学校に状況を伝え、子どもが安心して過ごせるよう「からかわない・指摘しない」環境づくりをお願いしておくと、家庭外での負担を軽減できます。

中期:治療と支援を生活に取り入れる

 チック症の経過は個人差が大きく、完全に症状が消える場合もあれば、軽い形で長く残る場合もあります。そのため、「すべてを短期間で治す」ことを目標にするよりも、「今困っていることを少しずつ減らす」という現実的な方向で支援を組み立てることが大切です。
 また、行動療法(CBIT)や薬物療法、鍼灸などの補完療法はいずれもチック症を支えるための有効な手段です。医療機関を中心に、家庭・学校が協力して支援を生活の中に取り入れることで、安心できる日常リズムが整い、症状の波を穏やかにしていくことができます。

長期:成長とともに変化していく経過を見据える

 チック症は、焦って治そうとするよりも、落ち着いた環境で経過を見守ることが大切です。 多くの場合で、成長とともに症状は自然に軽快していきます。
 一方で、注意・情動のコントロールが難しい時期や、ストレスの強い環境では症状が再び強まることもあります。
 そうした波を前提に、「今できる支援を積み重ねる」ことが、長期的な安定とお子さんの自尊感情・社会的適応力を守る基盤となります。保護者が冷静に見守りながら、必要なときには学校や医療機関、行政の相談窓口と協力して支援を続けることが理想です。

 受診や相談の目安は、「学校や家庭生活に支障が出ているとき」「本人や家族が困っているとき」です。そのような場面では、医師・心理士・支援員などの専門家と協力し、適切な方法を一緒に考えていきましょう。
 チック症は、本人の努力だけでなく、周囲が理解し、環境を整えることで改善していく疾患です。子どもの成長のペースに合わせながら、焦らず、落ち着いた生活リズムを支えていくことが、最も確実な支援といえます。

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