さる5月26日、仙台市で行われた第73回全日本鍼灸学会学術大会において、「伊勢の疳切り」についての発表をしました。
伊勢の疳切りとは、伊勢市で行われていた疳の虫封じの鍼のことで、伊勢市史(2009)には以下のような記述があります。
疳の虫とは、親指と人差し指の間に出る青い筋のことで、宇治地区や西豊浜町では虫を封じこむカンノムシノオジイサンという人が筋を切って治したという。鹿海町では針医者に筋を針でついてもらった。
伊勢市史 第8巻 民俗偏 , 2009, 250P
しかし現在では伊勢市でもあまり知られていない(実施施設が無い,30代以下の世代に知られていない)状態であり、小児はりの手法として失伝しているように思われたので、調査結果をまとめて全国規模の学会で発表することによって、小児はり研究の発展に寄与できるのではないかと考えたのです。個人的には、県外における同様の手法の情報が手に入るのではないかという期待もありました。
幸い沢山のかたに興味を持っていただき、県外で同様の手法が行われていたと思われる情報も提供していただけました。隣県の和歌山では伊勢の疳切りにかなり似た手法が行われていたようですし、石垣島では伊勢の疳切りとはかなり形態が違うものの、大変興味深い手法が行われていたようでした。和歌山なら気軽に調査に向かえますし、石垣島も前々から行ってみたいと思っていたので、航空券の安い時期に観光調査旅行の予定を組みたいところです。
今回の調査では、伊勢市史にある宇治地区や西豊浜町、鹿海町の住民のかたや、伊勢市、多気町の郷土誌担当課の職員さん、そして同業の友人・知人の先生方に大変お世話になりました。特に住民の皆さんは、私のような怪しい風体の者が突然来訪したにもかかわらず快く対応していただき、感謝の念に堪えません。
お力添えいただいた皆様に、深く感謝申し上げます。